これまでに歯周病治療薬として好中球エラスターゼ阻害剤を使用することを目標として、歯周病における歯槽骨吸収に好中球エラスターゼが関与しているか基礎的な研究を行ってきた。 平成27年度にはこれまでに行ってきたin vitroとin vivoの研究内容を見直しつつ、これまでに予定していたが終えていなかった実験を引き続き行った。in vitroにおいては、マウスの骨髄細胞から破骨細胞へと分化させる過程に好中球エラスターゼ阻害剤を添加して培養し、破骨細胞への分化をTRAP assayとTRAP stainにて評価したところ、マウスマクロファージのcell line (RAW264.7)を用いた実験結果と同様な傾向を示した。つまり、好中球エラスターゼ添加群では破骨細胞に分化する細胞数が減少していた。またin vivoでは、好中球エラスターゼ阻害剤添加群において歯周ポケット周囲の骨吸収程度と破骨細胞数をコントロール群である非添加群と比較検討した。それにより、好中球エラスターゼ阻害剤添加群では歯周ポケット周囲に存在する歯槽骨の吸収が抑えられ、破骨細胞数が優位に減少していた。これらのことから、好中球エラスターゼ阻害剤が破骨細胞の分化抑制に影響を与えていることが確認された。
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