研究実績の概要 |
近年、抗うつ薬の効果はシナプス間隙での変化だけで説明がつかないといわれてきている。申請者は近年精神疾患領域において注目されている、抗うつ薬の受容体以降の情報伝達系に介して研究を行った。 SSRIの一種であるフルボキサミンによってAkt-1のリン酸が増加することを示した。このメカニズムはBDNFによるtyrosine kinases receptor (TrkB)を活性化し、phosphoinositide 3-kinase (PI3K)を介しての系と、PLC- γ/ IP3/Ca2+ pathwayを介してsigma-1受容体を活性化させたPI3Kを活性化させる系との両方の系が関与しAkt-1のリン酸が増加ていることを示した。そこで、さらにプロテオミクス的手法を用い抗うつ薬により変化するタンパル質を解析した。 SNRIであるミルナシプラム耐性HT22細胞を作成し、対照のHT22細胞とのタンパル質の発現の差をプロテオミクス的手法を用いて解析した。両群の比較を2D-DIGE法を用いて二次元電気泳動後、MSにてタンパル質を解析した。その結果、tRNA ligase, glucose-regulated protein, Histone-binding proteinなどのタンパル質変化を認めた。 現在さらにこれらのタンパル質が抗うつ薬との作用にどのように関与しているのかを各タンパク質のsiRNAをHT22細胞投与し各タンパク質のノックダウンした後、Akt-1のリン酸が増加ているかを検討している。
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