本研究の目的は在宅緩和ケアにおける鍼灸治療の「意味」を問うことにある。在宅緩和ケアの一環として鍼灸治療が行われている在宅療養支援診療所において、参与観察およびインタビュー調査を行い、エスノグラフィーを作成した。患者にとって鍼灸治療は、身体全体が「軽くなる」ことに象徴される「身体感覚の変化」の経験をもたらすものであり、その経験が患者に新たな生活リズムの構築をもたらすものとして意味づけられていることがわかった。また患者の鍼灸治療の「意味」は、患者の主観的な経験を含め、鍼灸師や他職種を含む診療所の医療文化の上に構築されていた。
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