研究実績の概要 |
本研究はこれまでまったく焦点が当てられてこなかった,長期に増殖停止した細胞におけるテロメア維持機構の解明を目的としている。このような機構の存在を示せれば,テロメア維持機構の包括的な理解のために重要な寄与をなすことは疑い得ない。分裂酵母の窒素源枯渇状態が,必ずしもヒト分化細胞(長期に増殖しない細胞)の状態に当てはまるとは限らない。しかし増殖細胞におけるテロメア維持に関与する因子・機構が,分裂酵母とヒトでは高度に保存されていることから,本研究はヒト分化細胞でのテロメア維持機構の理解に繋がることが期待される。分裂酵母でもヒトでも,テロメアの維持にはシェルタリンよ呼ばれる蛋白質複合体が中心的な役割を果たしている。分裂酵母のシェルタリンはPot1, Tpz1, Ccq1, Poz1, Rap1, Taz1の6因子からなっており,そのうちPot1がテロメアの一本鎖DNA部分(Gテイル部分)に,Taz1が二本鎖DNA部分に結合し,その他の因子がPot1, Taz1を繋ぐことで,ブリッジ構造を構成している。 平成25年度までにその中でもCcq1が増殖細胞に比べて増殖停止細胞(G0)細胞では顕著に発現量が低下し,テロメア局在が失われていることを明らかにしていた。この際には栄養要求性のある株を使用して実験をしていた。しかし今年度,栄養要求性のない株を使用して実験を行ったところ,Ccq1の発現量やテロメア局在は,増殖細胞とG0細胞で大きな違いがないことが明らかとなった。さらにPoz1, Rap1についても,栄養要求性のない株で同様の検討を行ったところ,増殖細胞とG0細胞で発現量やテロメア局在に変化のあるものはないことが明らかとなった。 G0期で長期に培養をした場合には,少なくとも1週間は増殖細胞と同程度のテロメア長を維持していることを確認した。
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