分裂酵母は窒素源枯渇によりG0期に誘導され,長期にわたり生存可能であることが知られている。そこでまず窒素源枯渇培地で誘導されたG0期細胞のテロメア長について検討したところ,窒素源枯渇後8日もしくは20日間が経過しても,テロメア長は増殖細胞と同程度に維持されることが明らかとなった。次に窒素源枯渇後1日目のシェルタリン構成因子(Pot1,Taz1,Tpz1,Ccq1,Poz1,Rap1)のmRNA量と蛋白質量について検討したところ,すべてのシェルタリン構成因子のmRNA量はG0細胞の方が多かったが,蛋白質量は少なくともRap1,Poz1,Tpz1,Ccq1では変化がなかった。そこで実際にシェルタリン構成因子のテロメア局在をクロマチン免疫沈降法(ChIPアッセイ)により検討したところ,テロメアに直接結合するPot1-Tpz1複合体,Taz1のテロメア局在量に変化はなかったが,Ccq1, Poz1,Rap1のテロメア局在量は増殖細胞に比べG0細胞で増加していた。このことから,G0細胞では増殖細胞よりテロメアは凝縮して存在している可能性が考えられた。このことはG0細胞で核が高度に凝縮しているというこれまでの報告を支持する。 次にシェルタリン構成因子のG0期特異的な機能を検討するために,薬剤を添加によって転写レベルでは発現量を抑え,蛋白質レベルでは分解を促進して,シェルタリン因子を細胞からシャットオフする系を構築した。この系を用いてG0細胞特異的にシェルタリン構成因子を欠失させて一日培養後,窒素源含有培地でスポットアッセイをすることにより,G0細胞の生菌率について検討した。その結果,どのシェルタリン構成因子を欠失させても野生型株と比べて生菌率が減少することはなかった。またテロメア長も変化しなかった。このことはG0細胞のテロメア維持にはどのシェルタリン構成因子も必要ない可能性を示唆する。
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