研究課題
スフィンゴミエリン(SM)は細胞脂質二重膜上の脂質ラフトを構成する主要スフィンゴ脂質であり,細胞の増殖,遊走,ウイルス感染などへの関与が示唆されている。前年度までにSM合成酵素ノックアウト(SMS-KO)マウスより樹立した胎仔線維芽細胞において,細胞膜上のSMが減少しており,日本脳炎ウイルス(JEV)の細胞膜への接着が抑制され,その後のJEV感染(ウイルス複製~放出)も抑えられることが明らかとなった。また,このJEVの接着・感染の抑制は,SMSの2種類のアイソフォームのうち,SMS1の導入により回復することから,JEVの接着・感染にはSMS1により合成された細胞膜SMが重要であることが示唆された。平成27年度は,前年度から引き続きSMS1-KOマウスでの感染の検討を行った。野生型およびSMS1-KOマウスへのJEV腹腔内注射により,野生型マウスは注射後13日後に脳へのJEV感染および白血球浸潤や髄膜炎などの炎症所見が見られたにも関わらず,SMS1-KOマウスでは感染および炎症は確認されなかった。また,炎症性サイトカインであるIL-6も野生型マウスの脳では増加していたが,SMS1-KOマウスの脳では増加が見られないことから,SMS1によるSM合成はマウスにおいてもJEVの接着・感染に重要であることが明らかとなった。以上の結果から,SMS1がJEV感染の予防における標的となることが示唆された。
すべて 2015
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