研究課題/領域番号 |
25870861
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研究機関 | 愛知学院大学 |
研究代表者 |
佐藤 琢麻 愛知学院大学, 歯学部, 助教 (80609868)
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研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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キーワード | 歯科矯正学 / 交感神経 / 骨代謝 / β遮断薬 / 骨形成 / 骨吸収 / 歯の移動 / 骨量 |
研究実績の概要 |
交感神経の活動が亢進している高血圧自然発症ラット(SHR)と対照ラット(WKY)にβ2-遮断薬ブトキサミン(BUT)を経口投与し、コイルスプリングによる上顎右側臼歯の牽引後、歯の移動量、上顎骨骨密度、組織学的解析、血液生化学検査を行った。その結果、チロシン水酸化酵素(TH)免疫反応性の交感神経が歯の移動によって増加し、BUT投与により減少した。また、SHRコントロール群はWKYコントロール群と比較して移動距離が著しく増加し、BUT投与群では移動距離が減少した。さらに、SHRコントロール群において、骨吸収の増加による骨量の減少が認められ、BUT投与により、歯槽骨骨量の回復が認められた。以上より、交感神経系が歯の移動に関与し、BUTは歯の移動と歯槽骨骨量の減少を抑制することが示唆された。これは、骨特異的に作用する低用量β2-遮断薬によって交感神経制御による生体為害性のない歯の移動のコントロールを行える可能性を示し、また、有病者(骨粗鬆症、高血圧、歯周病)の矯正歯科治療における低用量β2-遮断薬の骨量減少抑制薬としての有益性を示している。 以上の結果をまとめ、論文をJournal of Dental Researchに投稿し、掲載された。また、90th Congress of the European Orthodontic Societyにて学会発表を行った。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
交感神経の活動が亢進している高血圧自然発症ラット(SHR)と対照ラット(WKY)の比較による歯の移動に対する交感神経の関与の確認、SHRおよびWKYの歯の移動に対する交感神経遮断薬の効果の検討を行うという計画に従い、SHRとWKYにβ2-遮断薬ブトキサミン(BUT)を経口投与し、コイルスプリングによる上顎右側臼歯の牽引後、歯の移動量、上顎骨骨密度、組織学的解析、血液生化学検査を行った。その結果、交感神経系が歯の移動に関与し、BUTは歯の移動と歯槽骨骨量の減少を抑制することが示唆された。 これは本研究の目的である、低用量β-遮断薬による生体為害性のない歯の移動のコントロールを行える可能性を示し、また、有病者(骨粗鬆症、高血圧、歯周病)の矯正歯科治療における低用量β2-遮断薬の骨量減少抑制薬としての有益性を示している。 また現在は、SHRおよびWKYにβ1-遮断薬アテノロール(ATN)を経口投与し、コイルスプリングによる上顎右側臼歯の牽引後、歯の移動量、上顎骨骨密度、組織学的解析を行っており、データを解析中である。
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今後の研究の推進方策 |
平成27年度は高血圧自然発症ラット(SHR)と対照ラット(WKY)の歯の移動に対するβ1-遮断薬およびその他の交感神経遮断薬の効果の検討を行う。 SHRおよびWKYにβ1-遮断薬アテノロール(ATN)を経口投与し、コイルスプリングによる上顎右側臼歯の牽引後、歯の移動量、上顎骨骨密度、組織学的解析を行った結果についてはデータ解析を進め、その他の交感神経遮断薬の効果の検討も進めて行く予定である。
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