研究課題/領域番号 |
25870862
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研究種目 |
若手研究(B)
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研究機関 | 愛知学院大学 |
研究代表者 |
菱川 敏光 愛知学院大学, 歯学部, 講師 (10421249)
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研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2015-03-31
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キーワード | 脳機能測定 / ブラキシズム / NIRS |
研究概要 |
実験1. NIRS反復測定におけるデータ安定性の検証のためにデータ取得と検討を行った。被験者ごと、チャンネルごとのNIRS信号の安定性について、予備実験から予想した再現性が得られなかった。予備実験を含めたデータの再確認と統計手法の見直しを行ったが再現性を確認する結果は得られず、予備実験の不備を示唆する結果となった。そのため新しい方法でデータ分析を行った。タスク中の血流動態の変化を示す波形の比較を行ったところ、被験者内では反復測定時に多くのチャンネルで波形が類似し、経時的な血流変化は同じような傾向を示した。しかしながら、そのときの血流変化量は、反復測定において大きく異なる場合も多く、データ安定性という見地から再現性が得られなかった原因の一つと推測している。一方、被験者間の比較では、変化の傾向にいくつかのパターンがあることが示唆された。本研究は顎運動を伴うタスクを行っていることから、タスク開始によるの短時間の頭位変化と、タスク継続中の緩慢な頭位変化の両方が起こっている可能性がある。頭位変化が無いとされている様々なタスクでは、タスク開始時点とタスク終了時でベースラインが一定し、正確な計測ができるとされているが、今回の波形の検討により、咬みしめタスク中の頭位の変化を分析する必要性があると考え、検討を行った。 実験2. 側頭筋分布領域の主成分分析は前頭領域の分析結果に基づき行う予定のため着手していない。fMRIについては、NIRSで再現性が確認できなかったために、解析方法の準備実験として被験者2名の撮影を行い、分析するにとどめた。前頭葉から側頭葉の一部に活性が認められ、おおむね良好な結果を得た。 実験3. AB群・健常群の分類のための問診調査票の回答より、AB調査の根幹となる問診調査票の妥当性を確認することができた。他の資料を含めたAB診断検査については現在結果をまとめている。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
NIRSデータ安定性の検証に関して、申請時に研究の基盤となると考えた解析方法によるデータの再現がとれず検証方法の再検討を行った。その結果データ比較の方法を広く検討することができた。本研究により分析を行うクレンチングに伴う脳血流の波形は、タスク中の血流変化の範囲が広く、波形を構成する要素が多いと考えられることから、一般的な再現性を検証する方法に加え、波形の解釈について検討したため遅れが生じた。 被験者数の増加により、タスクに伴うわずかな頭位変化がもたらす血流変化が、タスクに関連した血流動態の変化に比して、想定より大きいことが明らかとなり、測定時の問題点の検証や、測定方法の見直しなどを行った。頭位変化については、安静時の頭部傾斜についての検討を行い、論文として発表することができた。頭位変化がNIRS信号に及ぼす影響の検討を先行すべき課題と考え、当初の研究目的とわずかなずれが生じている部分があるが、最終目標であるABの診断にたどり着くために克服すべき課題が明らかとなり、これらの課題に取り組んだため、研究計画書の内容に比べ、わずかな遅れを生じている部分がある。
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今後の研究の推進方策 |
研究の第一段階と位置づけた、実験1・測定安定性の検証が最優先課題となる。波形の分析と頭位変化の関連づけを進め分析を続ける。顎運動タスクがNIRS信号に及ぼす影響について、詳細にまとまった報告は今までに無いことから、頭位変化の影響の検証は今後の同領域の研究の基礎となる重要な点であり、正確に行うべきであると考える。実験2・側頭筋分布領域の主成分分析については、実験1の結果によっては意味が無いかもしれない。側頭筋分布領域については、実験2のfMRIの撮像を進め、このデータを側頭葉脳活動のゴールドスタンダードとして用いNIRS信号と比較することで、NIRSからでも妥当性のある脳活動を検出できるような分析方法を検討する。実験3のAB診断法について、結果をまとめ実験4に進む。今後の研究の中心は実験4について検討を行いながら、実験5の目的達成のために被験者数をさらに増やし、分析を行う。 現在までのNIRSデータのばらつきや被験者間での相違、そしてそれらに起因する側頭筋分布領域の分析の困難性を考慮すると、今回の実験系で脳の反応部位を元に歯根膜の知覚について論ずるのは難しいかもしれない。しかし、興味深いことに、各チャンネルでの変動量をすべての被験者で平均したところ、一部のチャンネルでは増加が認められた。このことからクレンチング時の血流変化量は個人差が大きいものの、集団としてみた場合のパターンは一致していることが示唆された。NIRSの被験者を増やして分析を進めることで、ABの客観的かつ簡便な検査法としての有用性は証明できると考えられる。 最終目標であるABの診断にたどり着くために克服すべき課題が明らかとなり、これらの課題に取り組むことが研究目的の達成に向けて確実な前進となると考えられる。
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次年度の研究費の使用計画 |
25年度に計画したfMRI撮影について、本実験を開始していないために、撮影旅費および施設使用料が残存した。 ソフトウェアおよび一部消耗品については工夫して使用することで経費が節減できた。 fMRI撮像は26年度に繰り越して行う。 その他、節約できた経費については学会での情報収集を目的として、旅費・参加費として使用したいと考えている。
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