研究実績の概要 |
NIRS測定のブラキシズム診断指標としての利用可能性の検討を行った。最終年度では、咬みしめによってNIRS装置で測定可能な脳活動の検索・検討および分析を行った。咬みしめ力を40%最大咬みしめに規定した場合の脳血流動態からは、被験者全体として前頭前野および前運動野に位置するチャンネルで顎運動を伴わないタスクにおける測定と同程度の安定性が認められた。これより、顎運動タスクに伴う様々な脳活動をNIRSで測定することが可能であると考えられた。しかし、側頭領域では複数の要素が影響していると考えられるoxy-Hb, deoxy-Hbの変化を認め、主成分分析は困難と考えたことから、同領域のNIRSによる脳機能測定の困難性が示された。 同一被験者の反復測定時波形は、血流量および経時的変化にばらつきが大きく、単一測定の結果から覚醒時ブラキシズムの診断につながるような変化を見いだすことは困難であった。ブラキシズム群と健常群の血流動態の比較によって、前頭前野中央付近のoxy-Hbの値で二群間に有意な変化を認めた。この変化は覚醒時ブラキシズムの結果として起こる歯根膜感覚や顎運動の調節などの脳活動に起因している可能性があると考えた。このうち歯根膜感覚の影響を検討するためにインスタントスプリントを利用して歯根膜感覚を減弱して同様の測定を行った。スプリント群と健常群の比較から得られた結果は、ブラキシズム群と健常群の比較に近似した変化を認め、また、ブラキシズム群とスプリント群の比較においては明らかな差異を示さなかったことから、ブラキシズム群と健常群の間で認められた変化は、覚醒時ブラキシズムの影響のうち歯根膜感覚の変化に起因することが示唆された。このことから、覚醒時ブラキシズムを認める患者において脳血流動態を計測することで、その診断指標を得られる可能性が示唆された。
|