大規模災害発生時を想定した,各主体による帰宅困難者対策のあり方を検討するため,個々の主体のマイクロジオデータを用いた研究と個々の主体が実施している防災訓練等を通じた調査研究を行なった.事例とした主体は,大学,民間企業,小中学校である. 1.大学を事例とした研究では,「帰宅困難者数の推計」および「主体構成員の帰宅意志」をテーマとした調査研究を実施した.事例とした大学の学生居住地点データを用いて推計を行った結果,より精度の高い結果を得るために考慮すべき事柄などを明らかにすることができた. 2.民間企業を事例とした研究では,より安全な徒歩帰宅実現のための「主体構成員グルーピング手法」をテーマとした調査研究を実施した.事例とした企業の従業員データを用いた検証の結果,実用に耐えうるグルーピング手法を開発することができた. 3.小中学校を事例とした研究では,まず「児童生徒による集団避難行動の分析手法の開発」をテーマとした調査研究を行なった.複数の小中学校に適用し,検証した結果,開発した分析手法は集団避難行動の視覚化とそれによる避難行動の改善に極めて効果的であることが確認できた.次に「小中学校における防災マップ作成のためのツール開発」をテーマとして調査研究を実施した.複数の小中学校における防災活動を利用して,開発したツールの有効性と課題の検証を行なった. 以上の調査研究を踏まえ,最終年度には帰宅困難者対策をはじめとするさまざまな防災活動のアイデアを広く普及させることを目的としたシンポジウム「マップからはじまる学校防災」を企画し,本研究成果の一般社会への還元を図った.
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