研究課題
若手研究(B)
高脂肪・高コレステロール(HFC)飼料の摂取により高度の線維症を伴う脂肪性肝炎を発症するSHRSP5/Dmcrを用いて、脂質コントロールを主体とした食事介入の有効性について検討を行うことを目的とし、HFC飼料を継続的に投与した群と、一定期間HFC飼料を摂取した後に飼料を普通(SP)試料に置換した群を比較した。これまでの報告通り、HFC試料の摂取期間依存的に肝臓が肥大し、脂肪沈着、炎症細胞浸潤が観察された。血中及び肝臓中のコレステロール値が著しく上昇していたが、血中の中性脂肪値は変動せず、肝臓中では増加の後に病態の進展に伴い低下する傾向にあった。また、HFC飼料の2週間では顕著な線維沈着は観察されず、8週間では重篤な線維症を発症していた。SP飼料への置換による脂質コントロールにより、肝重量、血中および肝臓中のコレステロール値、肝障害マーカー値が顕著に低下した。しかし、HFC飼料8週間投与後に食事介入を行った群では肝臓中のコレステロール値はベースラインの値までは低下しなかった。また、組織学的には、食事介入により脂肪肝および炎症所見が著しく軽減し、肝実質の類洞構造が回復したが、線維化に対しては大きな変化が認められなった。以上のことから、線維症を伴う脂肪性肝炎に対する脂質コントロールを主体とした食事介入は、肝臓への脂肪沈着および炎症細胞浸潤に対しては速やかにその効果を示すが、線維症に対する影響はさらに長期的な検討が必要であることが示された。また、我々のグループによる先の研究において、食事によるコレステロールの負荷は肝臓のコレステロール取込みおよび生合成経路に異常を来たさず、むしろその代謝産物である胆汁酸の合成促進と排出抑制が肝障害を誘導している可能性が示されている。申請者の実験においても、食事介入によるコレステロール摂取量の変化がこれらの経路に影響を与えたことが考えられる。
2: おおむね順調に進展している
2013年度に実施を予定していた動物の飼育および試料の採取、実験サンプルの調整、血液生化学検査はすでに行った。また、肝臓中脂質含量の定量、組織標本の作製および観察もすでに実施した。2014年度は得られたデータを基に、そのメカニズムを明らかにするための分析を行う。
病態に対する食事介入の影響の機序を明らかにするため、ウエスタンブロット法により、脂質の分解・合成に関与する因子、線維化進展に関与する因子の発現量の分析を行う。これらを実施し、関連因子のシグナル伝達を分析することにより、表現型として観察された所見だけではなく、分子レベルでの影響を明らかにし、食事介入の有効性を総合的に評価する。
すべて 2014 2013
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