研究課題/領域番号 |
25870866
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研究種目 |
若手研究(B)
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研究機関 | 椙山女学園大学 |
研究代表者 |
三浦 隆宏 椙山女学園大学, 人間関係学部, 講師 (90633917)
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研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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キーワード | 哲学カフェ / 市民 / 公共的な対話 / ファシリテーション / アーレント |
研究概要 |
初年度の平成25年度は、大阪、東京、静岡で行なわれている公共的な対話活動の場を計9か所調査するとともに、名古屋を中心にしながら他にも神戸と大阪で哲学カフェをはじめとする市民との公共的な対話の進行を計12回務めた。 調査においては、映画を観てから参加者と対話を行なうシネマ哲学カフェや芸術劇場内のスペースで開催されているリベカフェ×哲学カフェといった本研究代表者がこれまで経験したことのなかった対話の場に参加することで、公共的な対話活動の視野を広げるとともに、大阪での中之島哲学コレージュや東京でのゲンロンカフェといった50名以上の参加者が訪れる間口の広い対話の場の様子も予定通り調査することができた。 そして、神戸や大阪で、哲学カフェ、テツドク、書評カフェと様々な対話形態の進行を実施するとともに、名古屋では哲学カフェ@名古屋という組織を立ち上げ、趣旨に賛同してくれた市民の方々とともに月に一度のペースで哲学カフェや書評カフェを開催し続けることで、名古屋での公共的な対話の場の常設化に向けての足場を固めることに取り組んだ。秋ぐらいまではせいぜい6、7名の参加者数で推移していたが、12月に16名の参加者を得てからは以後コンスタントに15名前後の参加を得るようになっている。 以上の実践活動と並行しつつ、シティズンシップ論やアーレント判断力論に関する研究図書を購入することで文献研究を徐々に行ないだし、哲学カフェに関する総説的な講演を7月に、またアーレントの「範例」という語に着目する学会発表を11月に行ない、前者については研究センター年誌に加筆修正のうえ講演録というかたちまとめ3月に公表した。 以上によって、次年度以降の研究計画を進めていくうえでの基礎を築くことができたと考えている。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
全国各地で行なわれている市民との公共的な対話活動の営みの調査・実践という目的において、平成25年度は大阪、神戸、東京については計画通りに進めることができたものの、もう一つの重要な調査・実践対象である仙台には一度も足を運ぶことができず、次年度以降へと持ち越すことになった。 その理由は、名古屋で月に一度のペースで公共的な対話の場を設けてゆくことにともなう日程上の調整がうまく運ばなかったことにあるが、そのぶん名古屋で年間15回と当初の計画を大幅に上回る実施回数を重ねることができ、また研究計画の当初は調査対象に含まれていなかった静岡での対話活動に参加することができた点を踏まえると、おおむね順調に推移していると判断してよいと思われる。
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今後の研究の推進方策 |
平成26年度も継続して全国各地の公共的な対話の場を調査・実践していくとともに、主としてハーバーマスのいう「市民的公共性」の議論や哲学・倫理学の思想史における「観客、注視者」の概念に関する文献研究を進めていくが、とりわけ名古屋での対話内容を録音のうえ文字に起こし、記録として残していくことで対話内容を可視化し、「よき哲学対話」とはどういうもので、それを促進する要因としてどのようなものが考えられるのかなど、広義の意味での「ファシリテーション」に関する研究に重点を置くことにしたい。その際、仙台で取り入れられているファシリテーション・グラフィックという独自の板書法が、シティズンシップ教育という点で参加者にどのような効果をもたらしているのかについて、具体的に探ることにする。
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次年度の研究費の使用計画 |
平成25年度において研究費の未使用分を次年度へと繰り越すこととなった理由としては、主に以下の2点が挙げられる。 まず一つ目は、予定していた仙台での公共的な対話の場の調査研究を日程上の都合から遂行することができず、その分の旅費および宿泊費が未使用となったこと。次に、名古屋で哲学カフェの場を開いていくにあたり、会場の使用料などに関わる謝金を経費として計上していたが、会場を提供して下さったお店側のご厚意により無料で使用することができ、謝金が発生しなかったこと。 平成26年度においても引き続き、全国各地の公共的な対話活動の営みの調査・実践を行なうが、研究計画の段階においては調査対象として挙げられていなかった西日本の地域や九州でも新たに哲学カフェが開かれ始めており、繰り越された旅費はこれらの場所の調査に充てる予定である。また平成25年度同様、名古屋で哲学カフェの場を開くにあたって会場使用料は特段発生しないと思われるが、その分の謝金は平成26年度から本格化させる対話記録の集積・分析に伴うテープ起こし代などの謝金に充てることを予定している。
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