研究課題
若手研究(B)
動脈硬化症は、幼少期から始まっており、若年期の生活習慣が将来の動脈硬化症の発症と関連している。近年開発された質量分析計による包括的な脂質メタボローム解析は、病態モデル動物において脂質代謝の変化から疾患発症のメカニズムを探索することを可能とした。本研究では、質量分析計を用いて脂質メタボロームを包括的に解析し、①睡眠の質・睡眠時間の脂質代謝への影響、②喫煙の脂質代謝への影響、③唾液中の脂質成分と血液中の脂質成分との比較により、唾液による検査法の確立を目指す。本研究では、大学生を対象に、生活習慣を調査し、血中の炎症マーカーの解析をおこなった。生活習慣の調査では、喫煙習慣(1日の喫煙本数および喫煙年数)、運動習慣(1回の運動時間と1月間の運動日数)、飲酒習慣(1回の飲酒量と1月間の飲酒日数)、毎日の起床・就床時刻および睡眠時間、不眠や過眠症状を調査した。不眠および過眠症状の調査には、それぞれピッツバーグ睡眠質問票およびエプワース眠気尺度を利用した。客観的な睡眠評価として24時間行動記録計を用いた。血中の炎症マーカーとして、TNFα、IL-1β、IL-6などを測定した。また、脂質解析用に血液および唾液採取をおこなった。さらに、脂質抽出法と膜表面抽出法による脂質メタボローム解析の手法を比較検討した。睡眠時間の不十分な学生では、十分な睡眠時間をとれている学生と比べ、血中の炎症マーカーが上昇しているものが認められた。また、喫煙者では非喫煙者に比べ、血中の炎症マーカーが上昇しているものが認められた。さらに、喫煙後に喫煙前に比し、血中の炎症マーカーが増大する症例があった。
2: おおむね順調に進展している
当初の計画通り、研究参加者を集めることができ、解析に必要な試料・資料を得ることができ、検体の測定は順調に進んでいる。
膜表面抽出法および脂質抽出法による脂質メタボローム解析について詳細に比較し、いずれの方法が多量検体の迅速処理に向いているのかを検討していく。これまでの検討で、睡眠不足時や喫煙により血中の炎症マーカーが上がる症例を確認できており、これらの症例から脂質解析を順次進めていき、十分な睡眠時や非喫煙者の検体と比較することで、生活習慣の脂質代謝への影響を明らかにしていく。さらに、同一者の唾液検体により血中の脂質代謝変動と同様の変動が観察されるか検討していく。
購入したパソコンが予算より低価格で購入できたため端数が生じた。平成26年度中に他の消耗品などと合わせて使用する予定である。
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