研究概要 |
本年度は、東京・上海・台北などで関連する文献資料・先行研究・関連する研究を収集・整理するとともに、上海ではインタビュー調査の調査体制を整えるため、現地の研究者等と交流を行った。日中関係の悪化に伴い調査の大規模な展開は容易ではなかったが、2014年2月にパイロットケースとして、蘇州大学の教員の協力を得て、蘇州市内でライフストーリー法による聞き取り調査を行った。 また、聞き取り調査の基礎となる、1950年代中国の学校教育と社会流動についての研究報告を東京にて開催された国際シンポジウム「Asian Studies Conference Japan, 2013」で実施した(2013年6月、桜美林大学)。 この他、オーラルヒストリー(口述歴史)の理論的研究と日本の事例の紹介を兼ねて、中国語において、台湾で出版された研究書に論考を掲載した。この論考では、(1)近年日本の歴史学研究、特に日本現代史研究及び中国現代史研究でオーラルヒストリーを用いた研究が増加していること、そしてその背景としての公文書の保存・公開状況が関係していること、(2)日本における中国近現代史研究においては、満鉄の調査以来の、オーラルヒストリー資料取り扱いの蓄積があること、(3)政治学・政治史におけるオーラルヒストリーと、社会学・社会史におけるオーラルヒストリーの位置づけと目的が異なり、前者ではアーカイビングについて、後者では理論化の部分において精緻化が進んでいること、などを論じた。
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