研究課題/領域番号 |
25870869
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研究機関 | 中部大学 |
研究代表者 |
大澤 肇 中部大学, 国際関係学部, 講師 (00469636)
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研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2017-03-31
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キーワード | オーラルヒストリー / 中国現代史 / 政治教育 |
研究実績の概要 |
本年度4月27日には、これまでの調査の内容を含めた形で、ハーバード大学で英語による学術講演(研究発表)を行った( OHSAWA Hajime, "School Education, Political Ideology and Social Mobility: A Comparative Study of 1950's Mainland China and Taiwan", Harvard Yenching Institute lunch talk series )。発表においては、米・日・中・韓国などの研究者から、調査地点の特殊性と同時代中国の普遍性との関係をどう考えるか、ジェンダー要素をどう考えるか、政治宣伝との関連性などの質問があり、質疑応答を行った。
同様に、本年度12月6日には、これまでの調査の内容を含めた形で、京都大学で中国語による研究発表を行った( 大澤肇「建国初期華東地区的教師群体構成:以上海輿松江為中心」)。残念ながら発表においては、オーラスヒストリーや個人資料の使用の問題については特に質問やコメントがなく、コメンテーターより使用概念のミスカテゴリなどについて厳しい指摘を受けた。また、12月に行った常葉大学での招待講演では、オーラルヒストリー資料も含めた、文献資料のデータベース化やデジタル化によって、新しい学問領域が創成されている状況を、アメリカや日本、台湾、中国の事例を中心に紹介した。
また、2015年度年度末より、2013年度に行ったインタビュー調査の記録を、文献史料と突き合わせる形で論文を執筆中である。2016年夏に刊行予定である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
本年度は、(1)家庭の事情(家族の約3ヶ月にわたる日本での入院とその看病、その後の出産・育児など)、(2)習近平政権の言論・学術政策に対する中国社会の過剰反応など
以上の原因からインタビュー予定者とのコンタクトがとれず、結果として、本年度は現地調査を予定通り行えなかった。そのため、現在までの進捗状況はやや遅れ気味である。また、本年度は上記の問題に対して、以下3つの対応を行った。
第一に、現在日本国内に在住している、一九五〇年代より三〇年以上中国に滞在していた方にコンタクトをとり、日本国内でインタビューを行った。当時の状況について解説をいただくとともに、このインフォーマントより、様々な個人資料(著書、以前のインタビュー記録など)を譲り受け、分析を行った。第二の対応として、東京の研究図書館などで関連する史料の閲覧を行うとともに、最新の研究資料集やスタンドアローン型データベースなどを購入し、インタビューに必要な一九五〇年代中国政治・社会への理解を深めた。第三の対応として、現地調査とインタビューを行いながら政治学の観点から東アジアの現代史研究を行っている既知の台湾人研究者が、京都に客員研究員として長期滞在中であったため、彼を愛知に招き、台湾の政治学研究における現地調査とインタビューの方法論について、レクチャーを受けるとともに、関連する研究発表を勤務先で行ってもらい、最先端の東アジア研究の成果を社会に還元した。
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今後の研究の推進方策 |
2016年度中に、2015年度実施できなかった現地調査の一部を行う予定である。当初予定していた地域で調査が実施できない場合は、中国他地域での調査も考慮に入れつつ研究を展開したい。
また現地調査と並行しつつ最終年度であるので、本研究の当初の暫定的な到達目標である、オーラルヒストリー資料の検討を行う。すなわち、サンプル数は少ないものの、他研究者が行った調査なども参考にしつつ、当初の目的である、①中央の意図する政治教育と、オーラルヒストリーからみる受容者の認識の一致/違い(共産党のリーダーや日本に対する見方など)、②教育行政において文書資料に何が残され、何が残されないのか、③各オーラルヒストリー資料の一般性/個別性などの諸点を明らかにする作業を進めていきたい。また、これまでの調査過程や文書史料などとの対照から、オーラルヒストリー資料の特徴を明らかにし、また文献史料を/によって、どう補完するのか、理論化を進めていきたい。
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次年度使用額が生じた理由 |
現地調査が行えなかったため。詳細は、「11.現在までの進捗状況」を参照されたい。
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次年度使用額の使用計画 |
平成28年度の現地調査費用として使用する予定。
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