人道的介入における倫理/非倫理という判断は、保護した/保護できなかった人々の数がそのまま評価されるわけではない。成功した人道的介入の場合、100万人の犠牲は実際には生じることなく、数万の犠牲のみが事実として記録される。この事実によって、人道的介入は非倫理的だと評価される恐れがある。 このアポリアを克服するための準備研究として、人道的介入の受益者たる保護される人々の視点を加味したのが本研究である。現地調査で、介入された国々の人々は介入に懐疑的で、介入されなかった国では介入に好意的だとの結果を得た。この結果を所与とし、保護される人々による、人道的介入への「コンセンサス」構築を次なる課題としたい。
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