研究課題/領域番号 |
25870878
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研究機関 | 南山大学 |
研究代表者 |
小林 純子 南山大学, 外国語学部, 准教授 (00611534)
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研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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キーワード | 子ども / 余暇活動 / フランス / 芸術 |
研究実績の概要 |
平成26年度の研究では、日仏の自治体における子どもの放課後活動や余暇活動に関する資料や文献を収集し分析したほか、フランスのパリ市における現地調査において、余暇センターや小学校で実施されている各種プログラムを観察し、とりわけ芸術文化活動へのアクセスの平等、芸術文化活動との関わり方の学び、その意味における「共生」のあり方を調査した。11月に本研究の調査協力者で、パリ市学校教育課のアニマトゥールを招聘し、アニマトゥールという職業についての講演会を開催した。 その結果、以下のことが明らかになった。第一に、日仏どちらの放課後活動においても、自治体の提供する活動が充実しているいっぽうで、必ずしも多くの親が活動を利用しているとは限らない。第二に、子どもの芸術文化活動への参加は、活動に付与されている社会的な意味と、親の選択行為の相互作用に依存するとされるが、パリ市の提供している芸術文化活動は、教育機関と文化機関を結びつけ、子どもの活動の場を制度的に規定するため、子どもがどのような活動に参加するか、活動にどのように関わるのかに対する家庭環境や社会的背景の影響から、子どもを解放する可能性をもっているといえる。第三に、フランスでは2013年小学校の時間割編成の改革によって授業時間と帰宅時間の間に生じたいわゆる放課後時間における子どもの集団的受け入れ制度を、各自治体が整備することになったが、この制度には、市町村の財政状況、スタッフや活動の充実度、これまでの経験の蓄積などに応じて、自治体による格差が生じている。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
平成26年度の研究においてとりわけ課題として取り上げた、自治体による子どもの放課後活動や余暇活動における芸術文化活動の内容、制度、参加対象者、関係者について、パリ市で調査を実施することができた。活動の種類と目的を分析してまとめたほか、現地調査では「成長のための芸術プロジェクト」のコーディネーターや、このプロジェクトを実施する余暇センターのアニマトゥールにインタビューを行った。また放課後活動の時間に、教育機関としての小学校と文化機関としての美術館とが、どのように協同して子どものための活動を行っているのかを観察した。その結果、共生の場や社会統合の機能としての放課後活動の特徴が少しずつ浮かび上がってきた。 またフランスの放課後活動支援の主な担い手であるアニマトゥールを招聘してアニマトゥールという職業に関する講演会を開催することができた。そこでは、アニマトゥールが女性の社会進出や、家庭外での子どもの預かりという社会的要請によって誕生し、学校教育を補完する活動を担うものとして発展し、現在ではその職自体が若者を労働市場に統合する役割を担っていることが明らかになった。 親が自治体による放課後活動にどのように関わるのか、どの程度関わるのかを明らかにするためには、資料収集やインタビューの実施などに課題が残されており、今後の研究のなかで進展させることとする。
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今後の研究の推進方策 |
フランスの地方自治体による放課後活動支援には、その理念、目標、制度のレベルにおいて共生の場や社会統合の機能としての役割が認められるが、実際に子どもを活動に参加させるかどうかは、親の就労環境など家庭の事情によるところが大きく、また放課後活動を通じた共生や社会統合というコンセプトがすべての親に共有されているとは限らない。子どもが放課後に活動する場を含む子どもの社会化される場はむしろ多様であり、親によってはその選択肢が広く、自治体による放課後活動支援を利用しない場合もある。その意味で、親の動機を把握するためのインタビュー調査は本研究に残された課題であり、平成27年度の現地調査において、今後の調査の土台となる予備的調査を実施する予定である。
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