平成27年度の研究では、2時点のパネルデータを用いた分析から以下の2点が明らかとなった。 ①約3万人のパネルデータを用いてスポーツグループに参加している地域在住高齢者で、その後の転倒発生が少なくなるかを検討した。その結果、スポーツグループへの参加頻度別の転倒発生ありの者の割合は「していない」が2.3%、「週1回未満」が1.7%、「週1回以上」が1.4%と参加頻度が多い者ほど転倒発生割合は少なかった。また、ロジスティック回帰分析の結果、スポーツグループへの週1回以上参加者では、非参加者と比較して、新規に転倒経験発生者が少なかった。 ②約3万人のパネルデータを用いて、どのようなスポーツをしている者で、その後の転倒発生が少ないのかを検討した。その結果、スポーツの実施割合は男女ともウォーキングと回答した者が最も多く(男性:40.7%、女性:30.3%)、次いで男性ではゴルフ(17.7%)が、女性では体操・太極拳(19.3%)と回答した者が多かった。転倒発生との関連では、ロジスティック回帰分析の結果、男性ではゴルフ、ウォーキングの順で少なく、女性ではウォーキングのみで少なかった。 これまでの研究結果から、横断分析では転倒の少ない地域では、その地域に居住する高齢者のスポーツグループへの参加割合が高く、かつ個人で運動を行っている者よりスポーツグループへ参加して運動を行っている者で転倒経験が少ないことがわかっていた。今回の縦断研究の結果を加えると、スポーツグループへの参加促進という地域づくりの取り組みが、地域づくり型の転倒予防対策として期待できる可能性が示唆された。
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