平成27年度は、特殊な声帯振動を持つ音声の分析を引き続き行うとともに、これまでの成果を統合した声質制御システムの構築を行った。 特殊な声帯振動を持つ音声の分析については、これまで継続的に使用していたスクリーム唱法による歌唱音声のほか、平成26年度の検討で使用し始めたささやき声に近い歌唱音声である息漏れ歌唱の音声を対象として検討を行った。これまでの本課題の成果として得られている、歌唱音声の声帯振動の違いが帯域ごとに算出した残差スペクトルの尖度に表れるという知見以外に、基盤として用いている高品質音声分析合成システムSTRAIGHTの非周期性指標に基づく指標を利用すると、残差スペクトルの尖度に表れにくいケースで声帯振動の違いが表れることがあるという知見が新たに得られた。 また、平成25年度に開発した、帯域ごとに残差スペクトルの尖度と群遅延の値との対応関係を予め算出しておき、この対応関係に基づいて入力音声の群遅延スペクトルの変動特性を変化させるという手法を用い、声質制御システムの構築を行った。このシステムにおいては、本課題の中で開発してきたGPGPUを利用した高度に並列化された実装を利用し、高速に動作するよう工夫を行っている。具体的には、STRAIGHTにおける基本周波数抽出部であるXSXの計算や、群遅延スペクトルの計算など負荷のかかる部分に対してGPGPUによる実装を利用して高速化を図った。
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