研究課題/領域番号 |
25870885
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研究種目 |
若手研究(B)
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研究機関 | 豊田工業大学 |
研究代表者 |
大森 雅登 豊田工業大学, 工学(系)研究科(研究院), 研究員 (70454444)
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研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2015-03-31
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キーワード | 量子ドット / 量子ロッド / ナノワイヤ / 分子線エピタキシー / TEM / EDX |
研究概要 |
平成25年度では、量子ドット積層型AlGaAs/InAsナノワイヤについて、分子線エピタキシー法による結晶成長とその断面構造評価および光学性評価を行った。断面構造評価では、成長したナノワイヤの正確な組成比をTEMおよびEDXを用いて評価するため、ナノワイヤの直径と同じ30nm程度まで試料を薄くして、厚さ方向の周辺超格子媒質を完全に取り除いた状態での分析を試みた。現在のところ、厚さ50nm程度に薄くした試料でのEDX測定の結果と、さらに薄くした試料での結果がほぼ同じ組成比であったことから、現状でナノワイヤ部分の組成比をほぼ正確に測定することができていると考えている。この結果から、ナノワイヤ部分は周辺超格子と比べIn組成が高くなった分(約10%)だけAl組成が低くなっており、AlGaAs層のAlだけが排除されてInと入れ替わっていることが分かった。これはIn-GaボンドとIn-Alボンドの強さの違いや、AlGaAs成長中と成長中断中のマイグレーションの違いに起因しているものと考えられる。これは今後電流路を設計する際の重要な知見であると考えられる。 光学特性評価では、顕微蛍光測定により単一ナノワイヤの蛍光スペクトルを測定し、ナノワイヤ中の基底エネルギー状態を調べた。測定した7個の単一ナノワイヤすべてにおいて、GaAsのバンド端よりエネルギーが高く分光器の分解能以下のスペクトル幅を持つシャープなピークが観測された。これは、ナノワイヤ成長時のAlGaAs層が厚かったため、ワイヤ中で3次元閉じ込め状態が存在し、量子ドット的な狭線幅発光が観測されたと考えられる。この局所的な障壁が存在するナノワイヤ試料を用い電気伝導特性の測定を行ったところ、予想通り障壁の影響で抵抗が非常に高く非線形な特性を示した。この問題を解決するためにAlGaAs層の厚さを1~2ML薄くした試料を用いて測定を行ったところ、抵抗が低くオーミック特性を示す良好なナノ電流路を得ることができた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
当初の予定通りAlGaAs/InAsナノワイヤの組成比を試料の薄片化によりほぼ正確に測定することができた。また、光学測定からナノワイヤ中のエネルギー状態を分析し、成長条件へのフィードバックにより問題点を解決できた。したがって、本研究はおおむね順調に進展していると考えられる。
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今後の研究の推進方策 |
平成26年度は当初の予定通り、単一ナノワイヤの光学特性と電気伝導特性の詳細な分析を進めていく。また、同時に結晶成長条件へのフィードバックやより正確な組成比解析も行う。加えて、さらに長く歪みフリーなナノワイヤを得るために、InP基板上In(Al)GaAs材料による歪補償法を使った形成手法の確立と評価にも取り組む。
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次年度の研究費の使用計画 |
液体ヘリウムが販売元の事情で入手困難となり、当初予定していた量を購入できなかったため。実験には液体窒素と無冷媒冷凍機で代用した。 次年度に繰り越分は液体ヘリウムの購入費用に充てる予定だが、今後も入手が難しい場合は無冷媒冷凍機の保守費用に充てる。
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