研究課題/領域番号 |
25870892
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研究種目 |
若手研究(B)
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研究機関 | 京都産業大学 |
研究代表者 |
中山 喜明 京都産業大学, 総合生命科学部, 助教 (40512455)
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研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2015-03-31
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キーワード | マクロピノサイトーシス / 低栄養環境 / 腫瘍細胞 |
研究概要 |
腫瘍細胞の低栄養環境への適応は、癌細胞の悪性化へと繋がることから、その適応機構の解明が期待される。研究代表者は2012年にムチン型糖鎖の合成開始酵素であるppGalNAc-T17が、ヒト胎生腎臓由来HEK293T細胞において、細胞の栄養状態の指標である細胞外N-アセチルグルコサミン濃度に依存して発現調節を受け、マクロピノサイトーシスを制御していることを報告した。古くから腫瘍細胞では、正常細胞ではみられない活発なマクロピノサイトーシスにより、恒常的に細胞外液の取り込みを行うことが知られているが、その生理的な意義は不明であった。2013年5月に悪性腫瘍細胞がマクロピノサイトーシス経路により細胞外タンパク質を積極的に取り込み、アミノ酸の獲得に活用していることがNature誌上で報告され、マクロピノサイトーシス調節因子の解明は抗腫瘍薬の標的因子の探索に繋がる可能性を有している。そこで本研究では、ppGalNAc-T17を含むムチン型糖鎖によるマクロピノサイトーシスの調節機構の解明を目的として研究を行った。モデル細胞として引き続きHEK293T細胞を利用し、マクロピノサイトーシスの解析を行った結果、N-アセチルグルコサミンの他、N-アセチルガラクトサミンやアルブミンの培地中への添加によりマクロピノサイトーシスの抑制効果が見られた。一方で、N-アセチルグルコサミン、N-アセチルガラクトサミンの添加ではppGalNAc-T17の転写誘導が見られたのに対し、アルブミンの添加では見られなかったことから、マクロピノサイトーシスの調節機構にはppGalNAc-T17依存的な経路と非依存的な経路の存在が示唆された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究の申請段階では、腫瘍細胞におけるマクロピノサイトーシスの生理的意義は全く不明であったが、研究開始初期に他の研究グループからアミノ酸獲得手段としてのマクロピノサイトーシスの生理的意義の報告がNature誌上にあり、本研究の目的の一つは達成された。そこで本課題ではマクロピノサイトーシスの調節機構の解析へと次に焦点を当て、研究を進めてきた。そのなかで、マクロピノサイトーシス調節経路にはppGalNAc-T17遺伝子の転写を介する経路と、独立した経路の異なる2種類の機構が作用していることを見いだすことに成功している。
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今後の研究の推進方策 |
これまでの研究により、マクロピノサイトーシスの調節にはppGalNAc-T17依存的な経路と非依存的な経路の存在が示唆されたことから、特にppGalNAc-T17依存的経路の解析を進めていく。その際、ppGalNAc-T17による糖鎖修飾タンパク質の探索を行うことにより、分子レベルでのマクロピノサイトーシス調節機構の解明を試みる。
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