研究課題
若手研究(B)
本研究は、系外惑星の多様性を探るため、多重像を持つクェーサーの理論的、ならびに、観測的研究から、銀河系外に存在する太陽系外惑星の探索の実現を試みるものである。まず理論的研究については、クェーサーマイクロレンズ現象による増光の計算を正確、かつ、高速に実現するためのGPGPUによる計算コード実装を試みた。年度途中で、当初予定のものより高いスペックのGPGPUが年度後半に発売される事が判明したため、計算機の購入自体は年度終わり頃になったが、それまでにGPGPUによるテスト計算程度であれば可能な現有の計算機を用いて、コード開発を行った。十分な高速化には至っていないが、専用言語CUDAを用いたプログラミングが可能になった。計算量は格段に少ないが、原理的には全く同じ計算を利用する、銀河系内のマイクロレンズ現象の異常な光度変動の再現に関する計算が可能となった。本来の目的実現に耐えるコードへと発展させるため、コード開発を引き続き行う。一方で観測的研究については、所属する研究機関の天文台を利用して、多重像を持つクェーサーの2色同時モニタリング観測を行った。天文台利用可能な時間の制約などから、実際の観測は、当初計画していた数の半分程度の天体に留まっているが、定常的なモニタリング観測を実施し、今後も継続してゆく。データ解析については、これまで経験のあった銀河系内のマイクロレンズ現象の解析に用いられるDIAという手法を利用しつつ、参照星の少なさなど異なる状況に対応するための解析手法の変更点を洗い出した。特に、集中的に観測している2天体については、多重像を完全に空間分解することはできていないが、光度変動の抽出には成功しており、引き続き観測データの解析手法の改良を行う。最後に、クェーサー自身の光度変動を積極的に利用して、クェーサー本来の光度を推定する方法についても検討を行った。
3: やや遅れている
理論的な研究に関しては、並列計算的なコードを作成するのが初めてであったためにコード開発に当初、思っていたよりも手間取っていた。また、実際に使用する専用計算機の購入が年度終わりになったために、専用計算機での計算がほとんど実行できていない。従って理論計算に関する研究が予定していたほど進まなかった。観測的な研究に関しては、所属研究機関の天文台における観測データの質が期待していた程良くないことが判明した。そのために、多重像を持つクェーサーのデータ解析を個々の像について実施するためにDIAを行うための工夫が必要であり、データ解析についても予定ほど進んでいないと考えるべきだろう。また、所属研究機関の天文台で実施されている他の研究テーマとの兼ね合いから、全ての観測時間を本研究のためだけに使用することはできないため、モニタリング観測は当初予定していた10天体から、集中的に観測する3天体と優先順位を落として観測する4天体に減少している。これは研究が遅れていることにはあたらないが、達成度としては下がることになるので、ここに記しておく。
短期的に見れば、専用計算機購入の遅れなどにより、特に理論的研究の進捗状況が予定よりも遅れている。しかし結果として、より新しい技術が導入された、より性能の高いGPGPUを持つ専用計算機を購入することができたため、そもそもハードウェアーの計算効率が高くなっている。そのため中・長期的に見れば、この進捗状況の遅れは取り戻せるものだと考えている。また、習得した専用言語CUDAはテスト計算を行っていたものから大きな変更もないため、これまで作成した計算コードはそのまま使用でき、ソフトウェアーの問題は無い。また理論・観測両方の研究において、大学院生の研究協力によって研究を推進していくことで、予定通りに研究を進めていけると考えている。
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