本研究は、系外惑星の多様性を探るため、多重像を持つクェーサーの理論的、ならびに、観測的研究から、銀河系外に存在する太陽系外惑星の探索の実現を試みるものである。 まず理論的研究については、引き続き高速計算を実現するためのGPGPUを利用した数値計算の実装を目的として研究を行った。まず、既に購入していた専用計算機に新たにGPGPUユニットを増設し、より効率的な計算が実行できるハードウェアの拡張を行い、実際に計算効率が約2倍向上したことを確認した。クェーサーのマイクロレンズ現象を数値計算するための計算コードは現在開発中である。 一方で観測的研究については、マイクロレンズ現象による光度変動の特徴をクェーサー本体の構造由来のものと、系外惑星由来のものと切り分ける必要がある。そのため、マイクロレンズ現象の詳細な観測が不可欠となるが、その発生を前もって予言することは不可能である。そこで、本研究課題にとって理想的な観測対象であるクェーサーの過去のモニタリングデータを解析し、マイクロレンズ現象を初期段階で捉えるための判断基準を見積もった。更にその基準をもとに、本体の構造を探るためのX線衛星による観測プロポーザル、ならびに、マイクロレンズ現象の判断の材料となる地上でのモニタリング観測の観測プロポーザルを作成・提出した。特に地上でのモニタリング観測は、そのデータが初期段階でのマイクロレンズ現象を捉えるために有用なだけでなく、のちの解析によって実際に系外惑星の存在について議論をするためにも重要なものである。 また、統計的な議論を行うためには、このような手法を適用するための対象天体数の充実も重要課題であることから、大規模サーベイ観測から多重像を持つクェーサーの候補天体探索にも協力しており、実際に新たな候補天体を発見した。
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