研究課題/領域番号 |
25870894
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研究機関 | 京都薬科大学 |
研究代表者 |
藤井 正徳 京都薬科大学, 薬学部, 准教授 (40434667)
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研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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キーワード | 痒み / 脳ニューロステロイド / アトピー性皮膚炎 |
研究実績の概要 |
本研究の目的は、脳ニューロステロイドをターゲットとした新規アトピー性掻痒治療薬を創出することである。前年度(平成25年度)の研究では、アトピー性皮膚炎を発症したマウスにおいて、脳ニューロステロイドの一種であるアロプレグナノロンが掻痒様行動を誘発することを明らかにした。また、アロプレグナノロン誘発掻痒にGABAA受容体の機能亢進が関与する可能性を示した。本年度(平成26年度)の研究実績は以下のごとくである。1)アロプレグナノロン誘発掻痒におけるL型電位依存性カルシウムチャネル (L-VDCC) の関与を検討した。L-VDCCアゴニストであるBAY-K-8644の投与によりアロプレグナノロン誘発掻痒が抑制される傾向が認められたことから、アロプレグナノロン誘発掻痒にL-VDCCの阻害が関与することが示唆された。また、アロプレグナノロンと同様にGABAA受容体機能促進作用とL-VDCC阻害作用をもつエタノールやバルビツール酸系薬でも掻痒様行動が増加することを明らかにした。一方、GABAA受容体選択的アゴニストとL-VDCC阻害薬の併用しても掻痒様行動の増加がみられなかったことから、その他の受容体やイオンチャネルも掻痒様行動の増強に関与することが示唆された。2)アトピー性皮膚炎モデルマウスにエタノールを投与した際にみられる掻痒様行動がアロプレグナノロン産生酵素阻害薬であるfinersterideの前投与で有意に抑制された。したがって、エタノール誘発掻痒に内因性に産生されたアロプレグナノロンが一部関与する可能性が考えられた。3)重度の痒みを呈するアトピー性皮膚炎モデルマウスを用いて、アロプレグナノロンと拮抗する作用をもつプレグネノロン硫酸エステルの抗掻痒作用を検討したが、予想に反して、掻痒様行動の抑制は認められなかった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
今年度当初の計画どおり、アロプレグナノロン誘発掻痒におけるL-VDCCの関与の有無を検討した。また、エタノール誘発掻痒において内因性に産生されたアロプレグナノロンが痒みの発現に関与する可能性を示すことができた。一方で、脳組織中のアロプレグナノロン量を各部位(大脳皮質、海馬、嗅球など)ごとに測定する予定であったが、現在、抽出方法およびガスクロマトグラフィーマススペクトロメトリー (GC-MS) の測定条件設定を行なっている最中であり、脳内アロプレグナノロン測定系の確立に至っていない。脳内アロプレグナノロンを測定できれば、アトピー性皮膚炎モデルマウスの自発的掻痒にアロプレグナノロンが関与するか否か、また、エタノール誘発掻痒に内因性アロプレグナノロンが関与するかなどを検討することが見込めたが、本測定系を確立できていないため、研究計画がやや遅れている。
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今後の研究の推進方策 |
今後の研究の推進方策として、脳内アロプレグナノロン量をGC-MSで測定する実験系の確立を最優先に行なう。また、エタノール誘発掻痒における内因性アロプレグナノロンの関与をさらに裏付けるため、finersterideではないアロプレグナノロン産生阻害薬であるSKF105,111を投与した場合のエタノール誘発掻痒行動および脳内アロプレグナノロン量に及ぼす影響を検討する。正常マウスおよびアトピー性皮膚炎モデルマウスの脳内アロプレグナノロン量を比較することにより自発的掻痒におけるアロプレグナノロンの関与の有無を検討する。アトピー性皮膚炎モデルマウスにおいて恒常的に脳内アロプレグナノロン量の上昇が認められれば、自発的掻痒に及ぼすアロプレグナノロン産生阻害薬の影響を検討する。
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