研究課題/領域番号 |
25870895
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研究種目 |
若手研究(B)
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研究機関 | 同志社大学 |
研究代表者 |
川口 真也 同志社大学, 高等研究教育機構, 准教授 (00378530)
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研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2015-03-31
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キーワード | シナプス / シナプス可塑性 |
研究概要 |
本研究の目的は、記憶・学習の基盤と考えられている神経細胞間のシナプス伝達の可塑的変化に直結した細胞内シグナル変化を可視化することにより、記憶・学習の成立課程を見て理解できるようにするための基礎的な方法を確立することである。具体的には、運動学習を担う小脳の唯一の出力細胞であるプルキンエ細胞に焦点をあて、シナプス伝達変化の可塑的変化を単一シナプスレベルで高解像度かつ長時間にわたり可視化する技術を確立することを目指している。特に、本研究では比較的理解が進んでいるシナプス後部と、それに比べ理解が進んでいないシナプス前部双方でのシナプス伝達制御機構を比較検討しながら、電気生理学的解析と組み合わせた実験系を構築するものである。 平成25年度は、プルキンエ細胞に形成される興奮性シナプスでの長期抑圧の発現と密接に連関するシグナル動態を検出するため、ケージトグルタミン酸の光活性化を用いた局所的なシナプス後部活性化を培養プルキンエ細胞に適用し、候補となる蛍光プローブ分子の局在変化を解析することを可能にした。 また、シナプス前部の分子生物学的手法が適用可能な実験系を確立するために、プルキンエ細胞の軸索終末部からの直接パッチクランプ記録を行った。そして、そこでの伝達物質放出のCa依存性が興奮性シナプスの場合とほぼ同じこと、放出可能プールは膨大であること、しかしながら活動電位に応じたシナプス小胞の放出確率は低いこと、などの知見を得た。さらに、小脳皮質の演算結果が集約されて小脳核に伝えられる際に、プルキンエ細胞の軸索終末の電気的興奮性が低いため、その出力が活動レベル依存的に調節される新しい情報処理メカニズムを明らかにした。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
シナプス後部の可塑性をモニターする蛍光タンパク質プローブについては、単一シナプスレベルでの検証をするための実験系の確立に至っており、それを実施することによりプローブの有効性を効果的に検証することが出来る段階に入っている。 また、シナプス前部での機能調節を分子レベルで、あるいは蛍光プローブを適用して解析するための、操作性の高い培養標本での実験系を確立し、その過程で新たにユニークなメカニズムの同定に成功した。
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今後の研究の推進方策 |
基本的に当初構想通りに研究を推進する予定である。 ただし、運動記憶の可視化に関しては、運動記憶そのものは形成時にはプルキンエ細胞での長期抑圧が重要であるが、形成後には小脳核へ移動する、という考えが提唱されてきている。プルキンエ細胞が小脳核へ情報を送る軸索終末部から、直接的にパッチクランプにより機能解析できるという利点を生かし、記憶の皮質から核への移動を検出できる手法も意識しながら、研究を推進したいと考えている。
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次年度の研究費の使用計画 |
設備備品については、当初予定通りに高感度カメラを購入したが、日常の研究遂行に必要となる消耗品費などについて、既に購入していた薬品などのストックによりかなりまかなうことが出来たため、新規に購入することなく研究を遂行できた。 節約できた経費は、次年度の助成金と合わせて新たに蛍光光源の購入や消耗品の購入に充て、有効に研究推進に役立てたいと考えている。
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