研究実績の概要 |
本研究は実践的な運用能力の獲得を目指す英語学習者が既存知識を最大限に活用しながら、さらに高度な知識とスキルを身につけるための学習システム開発を行うものである。認知言語学における用法基盤(使用依拠)モデルに基づいて、豊富な用例の助けにより学習者の断片的な知識群に有機的な結びつきを生じさせ、実際のコミュニケーションに資する豊かな言語知識ネットワークを構築できることが目標である。 最終年度である2015年度にはこれまでの成果に基づいて学習システム全体の大幅な改良を行った。中心となる表現リストはTED Corpusの統計的情報をもとに、既存の語彙リストや学習書などを参考にして、学習者にとって最も重要と考えられる約1,100の構文(construction)を抽出し作成したものである。実際的な英語の運用には個別の語に関する知識もさることながら、相互の結びつきに関する知識が求められる。ウェブ上のデータベースに格納された本リストは部分要素を軸にしたリストアップも可能であり、学習者や指導者が自ら表現の意味的・形式的な広がりを模索できるようになっている。 さらに、並行して開発されたTED Corpus Search Engine(TCSE)を用いて、リストに含まれる全ての表現について作例と実例が確認できる。実例については約2,000の英語プレゼンテーション動画の該当箇所をピンポイントで再生可能となっており、認知言語学で言う「発話のグラウンド」の概念を意識した学習および教育を促進する。また作例についてはE-Speakと称するシステムを開発し、学習者がコンピュータに接続されたマイクを通じて実際に発話練習を行うことができる環境を構築している。 なお、これらの成果物はすべてウェブ上で公開しており(http://yohasebe.com/tcse)一定の条件のもとに誰でも自由に利用することができる。
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