研究課題
若手研究(B)
昨年度は、特にアニオン交換形燃料電池及びリチウム空気電池の空気極触媒としての応用を指向して、ペロブスカイトLa1-xSrxMnO3-δ(LSxM)とMnO2ナノシート乱積層体(Mn-NS)の酸素還元触媒について、複合化する炭素粉末担体をこれまでのケッチェンブラック(KB)からカーボンナノチューブ(CNT)に変えて触媒調製を検討した。また、LSxMでは結晶構造の安定化や酸素発生反応(OER)活性の付与のため、FeをMnサイトに部分置換したLa1-xSrxMn1-yFeyO3-δ(LSxMFy)の合成についても試みた。その結果、CNTにLSxMFyを担持したLSxMFy/CNT触媒では、これまでのKB担体の場合に比較して熱的及び電気化学的酸化耐性が向上することを確認し、また酸素還元反応(ORR)活性についても、より径が細く比表面積が大きなCNTを用いることでKB担体のLSxMFy/KB触媒に近い高活性が得られることが明らかになった。すなわち、より黒鉛化度が高く比表面積が大きな炭素担体を利用することで、高活性と高酸化耐性を兼備する空気極触媒が合成できることが示唆された。一方、Mn-NSではMnO2ナノシートコロイド溶液へCNTを均一分散することで、CNTをMn-NSの層間に介在させたMn-NS/CNT触媒を調製できることを見出し、現在その詳細なキャラクタリゼーションやORR活性について検討中である。これらの研究成果は、LSxMFy/CNT触媒についてはすでに2014年電気化学会第81回大会(於:関西大学)にて口頭発表を行い、Mn-NS/CNT触媒についてもその触媒活性などを評価し、順次学会や論文などの形で発表していく予定である。
2: おおむね順調に進展している
昨年度は、現所属の東京農工大学に着任したばかりで新規研究室を立ち上げつつ本研究の実施開始となったため、触媒合成装置や触媒活性評価装置の準備など、研究計画調書に記載されていない部分に多くの時間を割くことになった。しかしながら、そのような中でも研究協力者の東京工業高等専門学校の城石准教授や東京理科大学の田中准教授のサポートを受け、順調に研究環境を整えることができ、上記の通り、LSxMFy/CNT触媒やMn-NS/CNT触媒の合成に成功し、その触媒活性についても十分に評価できるところまで到達している。本年度は、学生の人数も昨年度の3名から7名に増え、研究スピードも更に上がると予測されることから、そのようなことを総合的に判断しておおむね順調に進んでいると考えている。
昨年度、LSxMFy/CNT触媒を合成し、LSxMFy/KB触媒と比較することで、炭素粉末担体の比表面積や酸化耐性が触媒全体としてのこれらの性能に大きく影響することを見出した。そこで、今後は比表面積が大きくかつ酸化耐性も高い単層CNTやグラフェンなどを炭素担体として用い、アニオン交換膜形燃料電池やリチウム空気電池に適した新規空気極触媒に作り込んでいく。また、研究計画調書に従い、実際にこれらの電気化学デバイスの試験セルを作製し、実セルにおける発電性能や充放電特性について試験していく予定である。
すべて 2014 2013 その他
すべて 雑誌論文 (2件) (うち査読あり 2件) 学会発表 (4件) 備考 (2件)
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