最終年度では、これまで開発を進めてきたLa1-xSrxMnO3-δ担持カーボン(LSM/C)及びMnO2ナノシート/カーボン複合(Mn-NS/C)触媒について、実際に空気極触媒としての実用化に向けた取組みを中心に検討した。すなわち、アニオン交換膜形燃料電池やLi空気二次電池(LAB)の動作環境では空気極は1.0 V vs. RHE以上の貴な電位に晒されるため、そのような高電位でも比較的安定なグラフェン担体の適用や予め熱処理したカーボンナノチューブ(CNT)を担体とした触媒を合成し、その触媒活性と酸化耐性の双方を評価した。また、LABセルでは放電反応の酸素還元活性だけでなく、逆反応である充電反応の酸素発生活性の向上も重要であることから、LSMやMnO2ナノシートのMnサイトの異種金属置換も詳細に検討した。更に、実際に電気化学デバイスへの応用としてこれらの空気極触媒を用いたLABセル作製とin-situガス分析法による評価を、スイスのポール・シェラー研究所(PSI)との共同研究として立ち上げた。 その結果、まずグラフェン担体では黒鉛化度がCNTよりも更に高くより高い酸化耐性を示すが、黒鉛化度と比表面積の双方のバランスからCNTが目的の空気極触媒に対し最適な担体であることが明らかになった。そこで、CNTの欠陥部を予め熱処理で除去したところ、酸化耐性の更なる向上のほか、比表面積の増大でLSMの分散性も改善し触媒活性も向上することを見出した。一方、Mn-NS/C触媒ではMn1/3Co1/3Ni1/3O2ナノシートの一段階合成を試み、結果として10~20 nmのより微細なナノシートの生成とOER活性の向上に成功した。更に、LABセルへの応用では昨年夏のPSIへの訪問と秋の主任研究員の招聘を通じ、実際に触媒のステンレス網等への塗布や試験セルの組立法を学び、現在当研究室でもPSIと同レベルでセル作製と評価ができるよう各条件の最適化を進めている。本共同研究は今夏も訪問予定であり、科研費ほか他のPJへも繋げていきたい。
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