超音波とマイクロバブルの相互作用を利用するドラッグデリバリーシステムは、生体内での薬物投与を時間的、空間的、量的に制御可能な次世代治療技術として期待されている。標的指向型マイクロバブルが治療部位に特異的に吸着することにより、薬物投与を部位選択的に行える。研究期間内では、マイクロバブルの標的指向能力(付着効率、付着時間)を評価することを目標として、センシングデバイスとして横波モード圧電薄膜共振子を用いた計測システムを提案し、その定量性について検証することを目的とした。 平成25年度では、標的指向型マイクロバブルの前躯体を作成した。また、計測の再現性が良いという理由から横波モード圧電薄膜共振子として水晶共振子(QCM: Quartz Crystal Microbalance)を採用し、液体を滴下する方式の評価システムを構築した。QCMの電気的インピーダンス特性の変化からバブル吸着量の変化を定性的に評価できることを示し、その吸着量とインピーダンスを関連付ける理論モデルの提案を行った。 平成26年度では、理論モデルの修正を行い、QCMの電気的インピーダンスから吸着したバブルの数密度を定量的に換算する理論式を提案し、光学顕微鏡を用いた評価した結果と比較しその妥当性の検証を行った。この成果から標的とする分子の数とバブルの数密度をQCMにより定量的に評価することが可能であり、バブルの標的指向能力を評価するシステムとしての可能性を示した。また、生体内における血流がバブル吸着量に与える影響を検証するために、構築した滴下式システムを流路式に改良する取り組みも行った。QCM表面にPDMS製の流路を設置し、シリンジポンプを使用することで流量を調整できるシステムを構築した。作成した流路ではセンサ表面上で乱流が発生するなどの問題が生じることを確認し、今後その改善を行う必要がある。
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