最終年度は、当初の研究計画の通り、『甲骨文字辞典』(朋友書店発行)の製作・出版を行った。本書は本邦初の総合的な甲骨文字の辞典であり、現在までに発表された甲骨文字のほとんどを採録している。また、甲骨文字は現存最古の漢字資料であるため、漢字の成り立ちを明らかにする上で最重要の情報であり、本書は甲骨文字の字義・用例だけではなく、個々の文字の成り立ちやその後の字形変化なども分析したことが特徴である。これまでは日本語で書かれた甲骨文字の辞典がなかったため、日本において漢字研究や中国古代史研究を始めることを難しくしていたが、本書は入門者にも分かりやすい構成にしており、当該分野の発展に貢献することが期待できる。 研究期間全体としては、漢字の成り立ちを明らかにすることを主目的とし、最古の漢字資料である甲骨文字の分析を中心とした。論文として「甲骨文字の字種整理」を発表し、また一般向けの書籍として『漢字の成り立ち』(筑摩書房発行)を出版した。前者は辞典製作における親字の設定方法を論じたものであり、後者は漢字の歴史や字源研究史のほか近代の研究の問題点を提示し、新しい研究方法を示したものである。そして最終的な成果として前述のように『甲骨文字辞典』を製作・出版した。そのほか、本研究では甲骨文字のデジタルデータを作成して分析に用いたが、それをweb上で公開し、誰でも利用できるようにしている。(URL:http://koukotsu.sakura.ne.jp/top.html)
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