平成27年度の本研究計画では、平成26年度に行ったNHL-1/TRIM3と相互作用する因子についての解析をさらに進めた。これまでのスクリーニングで得られた28の候補遺伝子のうち、ユビキチンシステムに関与すると考えられるE1ユビキチン活性化酵素であるUBA5、E2ユビキチン結合酵素であるUBE2Q2をクローニングし、哺乳動物培養細胞を用いてTRIM3とFOXOタンパク質の関係について解析を行った。その結果、FOXOタンパク質のうちFOXO1およびFOXO3へのユビキチン化は見られず、FOXO4にモノユビキチン化が誘導された。この結果から、ユビキチン酵素群UBA5、UBE2Q2およびTRIM3はFOXO4のモノユビキチン化に関与すると考えられる。一方、これらの酵素はFOXO1やFOXO3とは結合するが、直接の基質としないことがわかった。このためTRIM3によるFOXO1およびFOXO3タンパク質の安定化は別の仕組みによって生じることが示唆された。 スクリーニングで得られた他の候補遺伝子のうち、Dishevelledについてもクローニングし、哺乳動物培養細胞を用いてTRIM3との関係とインスリンシグナルへの関与を生化学的手法によって調べた。その結果、DishevelledはTRIM3と内在性レベルで相互作用するが、インスリンシグナルに影響を与えていなかった。また、ユビキチン酵素群UBA5、UBE2Q2およびTRIM3とDishevelledを発現させ、これらの基質として働くかを調べた結果、Dishevelledがポリユビキチン化を受けていた。この結果から、本研究で得られたユビキチン化酵素群はDishevelledをタンパク質分解のターゲットとしていることが示唆された。これらの結果は、ユビキチン化酵素群は基質に応じてモノ/ポリユビキチン化を使い分けていることが予想される。
|