研究課題/領域番号 |
25870912
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研究種目 |
若手研究(B)
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研究機関 | 和光大学 |
研究代表者 |
森下 直紀 和光大学, 経済経営学部, 講師 (40589644)
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研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2017-03-31
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キーワード | カナダ / 水俣病 / 環境史 / 環境正義 / 先住民 / 国際研究者交流 |
研究概要 |
本研究の初年度にあたる2013年度は、当初計画通り2014年度以降の現地調査へ向け、以下の3項目に関する研究活動をおこなった。 (1)当事者団体・支援者とのネットワーキング:2013年9月5-8日の日程で開催された「第2回環境被害に関する国際フォーラム 水俣病 失敗の教訓を将来に活かす」および、9月13日に開催された「カナダ水俣病、先住民の証言 報告交流会」に参加し、カナダ水俣病の患者と支援者との交流および意見交換をおこなった。また、同行したマニトバ大学の研究者とも意見交換をおこない、2014年度の現地調査での再会を約した。 (2)研究枠組みの検討:カナダ先住民居留地における水俣病事件は、被害住民にとって「3つの受難」の一つであり、居留地への強制移住および同化政策という問題の上にこの問題があることを示している。そのため、単にカナダにおける水俣病の発生、経緯、現状の問題分析だけでなく、歴史や文化も含めた多角的な環境史の視点が求められている。2013年度は、被害地域に関する文献調査を含め、2014年度の現地史料の渉猟へ向けた基礎的な研究枠組みの構築を模索した。その一環として、2013年3月に開催されたアメリカ環境史学会(ASEH)の年次大会に参加し、欧米の研究者による研究枠組みの分析をおこなった。 (3)現地調査計画:(2)の研究枠組みの検討とともに、2013年度は、2014年度の現地調査に向け具体的な計画立案をおこなった。熊本学園大学水俣学研究センターは長年水俣病の研究活動と被害者支援活動をおこなっているが、2014年8月に、医師を伴った被害者への健康調査団を派遣する予定となっている。この調査に随行し、聞き取り調査や地域環境の視察調査をおこなうこととした。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
現地調査計画の立案や関係構築に関しては、概ね当初計画通りとなったが、本研究に関わる北米先住民族部族、民族自治権、自然保護政策、公害防止制度、土地管理制度に関する文献の入手が当初予想よりも困難であることが判明した。2014年度ではこれを挽回すべく、現地での資料渉猟を効率的に進める必要がある。
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今後の研究の推進方策 |
2013年度の当事者や支援者への聞き取りを通じて、カナダ政府が彼らを水俣病患者としては認めていないということへの問題をどのようにとらえるかについて課題が共有された。そして、彼らは彼らの有機水銀被害とその賠償について、政府がどのような基準や枠組みによってその決定がくだされているのかについての情報を求めていることが判明した。今後現地調査を通じて行政施策の歴史的経緯を踏まえ解明することが求められているが、その際にはカナダ政府や行政機関への各種情報公開請求をおこなうことも検討しなくてはならない。情報公開請求には、高度な法的枠組みの理解が必要となる場合があるため、必要に応じて現地で専門家の協力を得なくてはならない。 以下は、申請調書に記載した事項における変更点 ・研究代表者の移行:研究代表者の所属を、立命館大学衣笠総合研究機構より和光大学経済経営学部に移行。 ・上記の移行に伴い、「研究計画・方法」に記載した、研究協力体制・連携体制を変更する。「研究計画・方法」②- (e)について、研究代表者を(e)の内部から外部(和光大学)へと変更する。 ・「研究計画・方法」②-(d)は、2013年度から新たに発足した立命館大学環太平洋文明研究センターの所属とし、研究代表者は上記研究センターの客員協力研究員として連携をおこなう。
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次年度の研究費の使用計画 |
2013年度末に実施した海外での学会参加の旅費が不明確であったため、予算確保に余裕を持たせたため。 次年度は、2回の海外調査を予定しており、その旅費に次年度の予算の大半を用いる。また、物品費についてはウィンドウズXPのサポート終了を受け、PCの購入費用に用いる予定であるが、消費税変更前の重要により現在関連部品の調達が困難となっているため、次年度への持越しも検討している。なお、現在の研究活動は携帯用PC(ウィンドウズ7)を用いている。また、次年度は渉猟した研究資料のデータ化のためアルバイトを用いる。
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