研究課題/領域番号 |
25870913
|
研究機関 | 早稲田大学 |
研究代表者 |
金 ミンスク 早稲田大学, 理工学術院, その他 (80535873)
|
研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2017-03-31
|
キーワード | 植民都市 / 漁村 / 景観 / 歴史的建造物 / 敵産家屋 / 負の遺産 / 変容 / 復元 |
研究実績の概要 |
本研究課題は、植民地期の韓国の港湾都市における建築と都市景観の歴史研究を通じて、それらの変容を明らかにするとともに、その地域に現存する未指定文化財がもつ潜在的な歴史的価値を創成することを試みるものである。 当該年度の主な成果は次の2点である。 まず、初年度に携わった研究である近藤豊写真資料のデータベース構築作業が無事に終わり、デジタルアーカイブとして公開された。近藤豊は古建築の細部意匠の研究者として著名な建築史家であるが、戦前には韓国にも渡航しており、1930年代から1940年代の歴史的建造物や景観写真を撮影している。近藤豊の韓国建築写真資料には朝鮮総督府や他の研究者・写真家などの資料からは得られない貴重な資料も含まれている。このデジタルアーカイブの特徴は、膨大な古写真資料をGISおよびWebベースマップを用いて視覚的・効果的に検索できるようにしたことである。 次いで、韓国港湾都市の植民地期の建築・都市像把握のために統営に関する史資料の考察、基礎的な現地調査を行った。統営は朝鮮時代の水軍統制営があった場所で、地名もそこから由来する。近年、国宝・洗兵館とその一帯の統制営址の整備復元が進むにつれ、統営港周辺に関する整備も着々と進んでいる。しかし、文化財の整備復元・行政(地方自治体)主導の地域資源の発掘活用ブームは近代以降の地域遺産の取り壊しに留まらず、都市再生という名のもとで新たな開発ブームを巻き起こしているのが現状である。。そこで、当該年度には統営港を中心として点在していた歴史的建造物が1910年代から1930年代にかけてどのように転用されたかについて基礎的な調査を行い、その成果を学会にて発表した。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
研究着手2年目には初年度と同様、史資料調査と基礎的な現地調査を行った。史資料の読解・分析成果の一部は学会発表を通じて公表することもできた。集めた情報のデータベース構築についても現在ツール等を模索中である。 当初の計画では、当該年度は未指定文化財や地域の歴史文化資源としての潜在的な価値がある建物を選別し、個別調査への取り組みを始める予定であった。しかし、調査対象地では都市再生という名で植民地期の建物の取り壊しが進んでいる真っ最中であった。そのため、個別調査の時期を変動する現地の状況を見据えつつ、研究スケジュールを順延した。
|
今後の研究の推進方策 |
初年度に引き続き、史資料調査・現地調査を行うとともに、その成果の公表のための作業に取り組む。 まず、現地の研究者・郷土史学者・行政関係者らの協力を得て、学術的に価値が高い未指定文化財や、日常の風景や都市景観を形成する上で価値がある建築物のリストを作成し、一部建物の個別調査を行う。 次いで、蒐集した資料やフィールドワークの内容をデータベースとして構築し、地域固有の価値や特徴を生かしたまちづくりができる方法を模索する。 最後に、研究成果を地元に還元し、次なる発展に結べるよう、ワークショップか研究会を開催する。
|