研究課題
最終年度である平成27年度は、「思弁的実在論」および「新しい唯物論」に関する前年度までの考察を総合し、その社会的意義の検討、および芸術・文化論への応用を行った。また、カンタン・メイヤスー『有限性の後で』の翻訳を完成させ(大橋完太郎・星野太との共訳)、議論の構図を示す解説文を付して、平成28年1月に出版した。本年度において、本研究の主導概念である「無関係性」は、「秘密」と言い換えられ、そして最終的にそれは、「解釈」に対して絶対的に無関係なもの=「無解釈的なもの」として規定された。従来の人文学においては、事物について多様な解釈可能性を肯定することが基本線であったとすれば、事物について理念的に「無解釈性」を想定することは、従来の人文学からの逸脱であり、この想定と従来の解釈的たる人文学とを「並立的」に同時作動させる、という立場を、本研究の最終的な立場として練り上げた。「秘密」という論点は、誰もが解釈空間を共有するための「エビデンス」の重視が形骸的に肥大していると目される現代社会への批判に応用された。またそれは、建築論の文脈では、過剰な空間共有への批判という文脈にも応用された。本年度は、総合的な成果を英語で発表することに注力し、10月には台湾において、エビデンスの問題と「思弁的実在論」研究の関係について発表を行った。12月には、ロンドンのキングストン大学CRMEP(現代ヨーロッパ哲学研究センター)にて、日本におけるドゥルーズ解釈史を紹介しつつ、無関係性論の観点からドゥルーズを再読する可能性について発表を行った。さらにアレクサンダー・ギャロウェイ氏とのメール対談も行った。当初計画していた単著は年度内には刊行できなかったが(執筆中である)、その主な論点は、本年度の中心的業績である論文「思弁的実在論と無解釈的なもの」に含まれている(これは台湾での発表の改稿版である)。
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巻: 4月号 ページ: -
現代思想
巻: 43-9 ページ: 132-135
巻: 44-1 ページ: 44-51