研究概要 |
動物は、時々やってくる匂い情報を頼りに匂い源に到達できる。例えば、オスのカイコガはフェロモンを頼りにメス (フェロモン源) まで効率的に到達することが知られている。もし、このような高度な探索行動を実現するアルゴリズムを提案できれば、情報工学と生物学に同時に貢献できるだろう。本研究課題では、探索者 (昆虫) が時々流れてくるフェロモンを頼りにフェロモン源を探索する問題を考える。この問題は簡単に見えるが、フェロモンの拡散領域から外れると目標に到達できなくなる。早く確実に目標にたどり着くためには高度なアルゴリズムを必要とする。平成25年度は本探索課題を考察するための理論およびシミュレーション基盤の整備を行った。具体的には、一番単純な系である2次元格子上でシミュレーション、ベイズ統計に基づく探索アルゴリズムの構築に着手した。また、実験グループとの共同研究により昆虫 (カイコガ) の嗅覚神経回路において神経細胞が匂い情報をどのように表現しているか調べた(Kobayashi, Namiki, Kanzaki, Kitano, Nisihkawa and Lansky, Brain Research 2013)。本課題とは若干異なるが、多細胞同時計測データから神経回路の設計図 (神経細胞間のシナプス結合) を推定する手法を提案し、提案手法は既存手法に比べて推定精度が向上することを示した (Kobayashi and Kitano, Journal of Computational Neuroscience 2013)。本成果は、神経回路がどのような仕組みによって情報処理を実現しているかを研究する上で必要となる技術である。
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