移動する物体を眼で追いかける場合,その物体に合わせた眼の移動のみならず,視覚情報処理に深く関与する視覚的注意も移動する.本研究では,奥行き方向に移動する物体を追従時の注意の空間特性を検討することを目的とした. 27年度では,昨年度に引き続き,両眼立体視を利用して奥行き方向に移動する物体を追従時に生じる物体の消失に対する反応時間の検討(テーマ1),有効視野課題を用いた注意の3次元的な空間特性の検討(テーマ2),前進・後退運動観察時に生じる自己運動知覚に関する検討(テーマ3)を行った.1については,物体の進行方向の位置(例えば,接近刺激を観察中に,被験者に対して近くにある物体)で生じる変化に対する反応の方が,反対方向の位置でのものよりも速いことが示された.2については,注意は奥行き方向にも分布しているが,その範囲は非常に狭い範囲に限られていることを示した.3については,特に3次元方向への運動印象が強く生じる条件では,自己運動知覚が強くなることが示された. 以上の成果については,国内外の学会にて発表した.
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