本研究の成果は以下のようである。まず、①満洲開拓者の引揚げは、単に国境を越えた人びとの移動ではなく、国家の政策と連動しながら地域社会に再定住していくプロセスでもあることを指摘した。そして、②戦前から戦後にかけての度重なる移動の結果、血縁・地縁・社縁から切り離された満洲開拓者が戦後日本社会に再定住するとき、開拓者同士の人的ネットワークである「開拓者ネットワーク」が重要な役割を担ったことを明らかにした。③この「開拓者ネットワーク」は、生活再建を求める満洲開拓者の生存戦略として機能しただけでなく、戦後農地改革を進める国家にとっても重要な「人的資源」として見込まれていたことも明らかにした。
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