2014年度は、前年度に引き続き、資料蒐集を進めるとともに、その成果を踏まえて、以下の研究発表・原稿執筆を行った。 まず、5月17日に龍谷大学アジア仏教文化研究センター・2014年度第1回国内シンポジウム「近代日本仏教と親鸞」で、「親鸞と社会主義―解放と阿片―」と題して報告した。この報告は、龍谷大学アジア仏教文化研究センター発行の『近代日本仏教と親鸞』に同題の論文として掲載された。本稿は、社会主義との関連で描き出された親鸞像を辿りながら、明治末年から戦後までの親鸞論のひとつの系譜を描き出し、戦後親鸞論へ流れ込む水脈のひとつを浮かび上がらせたものである。 また、9月13日には日本宗教学会第73回大会で「近代日本における反宗教運動と仏教の論争」と題する報告を行った。同題の報告要旨が『宗教研究』第88巻別冊に掲載された。さらに、12月13日に国際ワークショップ「アジア仏教:複数の植民地主義と複数の近代性―第3回ワークショップ」(Asian Buddhism:Plural Colonialisms and Plural Modernities)で、"Marxism and Buddhism in Modern Japan:The Anti-Religion Movement"と題して報告した。両報告では、1930年代のマルクス主義者と仏教界との論争を分析・検討し、マルクス主義者が1920年代後半より、海外から導入した宗教批判理論(宗教=阿片論)に基づき、反宗教運動を出発させたのに対し、仏教界からは歓迎論から全面否定論まで様々な反応があったことをあきらかにした。そして、反宗教運動を批判する仏教徒の議論から、当時の典型的な仏教理解を抽出した。
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