報告者は、近代日本における反宗教運動と仏教の論争を研究課題として、その論争の全体像を再構成すべく史料を調査・発掘し、蒐集した史料の分析作業を進めた。 分析の結果、①マルクス主義の宗教批判は宗教者の社会的立場に集中していたこと、②仏教徒による宗教批判への応答は、宗教の内面的・精神的次元を強調するものであったこと、③したがって反宗教運動と仏教との論争が理論的次元では全くかみ合っていなかったこと、④反宗教運動が宗教界に衝撃を与えたのは、宗教者の社会的地位や経済的優位性に対する不満が社会に広範に存していたからであったこと、をあきらかにした。
|