近年、TPPや多国間FTAにより貿易の自由化が進展しており、1国の経済政策が外国に与える影響は大きくなっている。そこで、外国の経済政策が日本の経済状況に与える影響を研究する必要がある。そこで、平成26、27年度に構築したモデルに政府の行動を取り入れた。この研究では、多国籍企業は利潤を最大にするよう自由に生産場所を決定していると仮定している。そして、多国籍企業がある国に立地して生産を開始する際に、労働者と出会わなければ生産ができない状況を考えた。また、労働者にとっても多国籍企業に雇ってもらわなければ賃金所得を得ることができず、摩擦的失業が存在する状況を想定した。そして、政府は失業率を減少させるよう企業に補助金を出すとした。このような状況下において、政府の最適な補助金率や政府が補助金を出さなかった場合の経済厚生と補助金を出している場合の経済厚生とを比較して、どちらが望ましいのか、という問題に対する答えを出した。 この研究によって、以下の二つの結果を得ることができた。一つ目は、政府は外国政府と企業の誘致合戦をやることによって、過剰な補助金を企業に支出することが分かった。二つ目は、労働市場で労働者が職を見つけにくい場合、過剰な補助金を企業に支出した方が全く補助金を出さない場合と比較して、経済厚生が高いことが分かった。また、労働市場で労働者が職を見つけやすい場合、補助金を出すよりも補助金を出さない方が望ましいことがわかった。したがって、現在のように人々が職を見つけにくいときには、失業対策のために過剰な補助金を与えることは、補助金を与えないときと比べて望ましいことが分かった
|