本研究は,立体的な口腔内装置表面に,抗菌性および防汚性を有するフッ素イオンと抗菌性を有する銀イオンとをプラズマイオン注入法を用いて同時に注入することにより装置表面を改質し,抗菌性,細菌付着抑制およびプラーク易離脱性を付与することを目的として行った。表面元素分析によりフッ素および銀イオンを本法で注入したアクリルレジン試料では,試料表面にフッ素および銀が認められ通常のイオン注入が困難な絶縁体であるアクリルレジンへの本法の適応が証明された。さらに,緑膿菌の増殖を減少させる効果も認められ,将来本法を口腔内装置に応用することにより,デンチャープラークが起因となる誤嚥性肺炎の予防につながると期待された。
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