研究課題/領域番号 |
25870928
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研究機関 | 関西大学 |
研究代表者 |
田頭 茂明 関西大学, 総合情報学部, 教授 (70332806)
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研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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キーワード | 行動認識 / 行動変化 / 動線解析 |
研究実績の概要 |
本研究課題の目的は、モバイル計算環境においてユーザの行動決定に直接影響を与えた情報が重要であると考え、ユーザの閲覧・検索履歴であるネットワーク上の動線と、行動軌跡である実空間上の動線とを融合・解析する手法を提案し、モバイル計算環境における新しい情報の価値指標を確立することである。具体的には、(1) ネットワークにより影響を受けた行動の変化を判別する行動認識技術、(2)行動変化の原因となった情報の特定技術、(3) 時間的かつ地理的構造を有する情報の価値指標の定義、を研究の柱として掲げ、各技術に関する課題とその解決策を探求する。また、評価を通して提案した情報の価値指標の有効性を明らかにする。本年度は、上記で示した(1)と(2)の精度を高めるために、昨年度までに開発した動線解析技術の開発を継続するとともに、新たに生体信号センサを導入して、行動変化の判別と、その変化の原因となった情報の特定を行う技術を確立した。具体的には、(i)無線電波を用いた動線解析技術の適用範囲を広げるために、異なる無線メディアの基地局と端末でも位置を取得できる技術を開発した。(ii)生体信号情報を場所と時間に関連付けて、情報の閲覧履歴や検索履歴等のネットワークの動線を解析し、行動変化の要因となった情報を特定することを試みた。(iii) 時間的かつ地理的構造を有する情報の価値指標の定義として、実空間での行動変化の度合い、行動に影響を与えたユーザ数を用いて、情報の価値の定義を検討した。これらの技術は、本研究課題の核となる技術であり、本研究課題を遂行する上で必要不可欠である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本年度は、行動変化の検出精度を高めるために、昨年度までに開発した動線解析技術の開発を継続するとともに、新たに生体信号センサを導入して、行動変化の判別と、その変化の原因となった情報の特定を行う技術を確立した。具体的には、無線電波を用いた動線解析技術の適用範囲を広げるために、異なる無線メディアの基地局と端末でも位置を取得できる技術を開発した。また、生体信号情報を場所と時間に関連付けて、情報の閲覧履歴や検索履歴等のネットワークの動線を解析し、行動変化の要因となった情報を特定することを試みた。このことは、行動変化の原因となった情報の特定技術の基盤を確立できたとともに、来年度実施する時間的かつ地理的構造を有する情報の価値指標を定義する上での足掛かりとなる。これらのことから、ほぼ計画していた通り研究を達成できたといえる。
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今後の研究の推進方策 |
今後は、昨年度までに研究した「行動の変化を判別する行動認識技術」と「行動変化の原因となった情報の特定技術」の精度を高めるとともに、昨年度までに得られた成果を活用して、「時間的かつ地理的構造を有する情報の価値指標の定義」を主に研究する予定である。さらに、生体信号センサの情報と、行動の変化およびその変化の原因となった情報を可視化できるソフトウェアを開発し、提案手法の解析を進める予定である。具体的な計画は以下のとおりである。 ・生体信号センサを用いた行動変化の判別とその変化の原因となった情報の特定を行う技術の開発を継続し、生体信号情報と行動変化の関係性を明らかにする予定である。具体的な方法として、生体信号として脳波と脈拍を利用しており、それらの値と時間場所の関係を明確にして、行動の変化をそれらの値の異常値として捉えて検出する。この検出手法としてコンピュータセキュリティ分野の不正検出で利用されるIde らの手法を基にして行動変化の特有の改良を加えた手法を確立する。Ide らの手法は、時系列データからオンライン性と周期性を考慮して異常を検出する確率的な手法で、生体信号の特性を加味し精度向上を目指す。 ・動線解析技術の精度を高めるために、異なる無線メディアの基地局と端末でも位置を高精度に推定できる技術を確立する。 ・時間的かつ地理的構造を有する情報の価値指標の定義に関しては、実空間での行動変化の種類や度合い、行動に影響を与えたユーザ数、情報の閲覧パターンなどを含めて情報の価値を新たに定義する。さらに、モバイル計算環境における情報の価値は、時間と場所に強く依存することが予想できる。このため時間的かつ地理的な構造をとり、時間と場所の類似性を考慮し、多くのユーザの行動に影響を与えた情報に関しては、同じ時間、同じ場所にいる他のユーザに対しても重要となるように定義する。
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