本研究課題の目的は、モバイル計算環境においてユーザの行動決定に直接影響を与えた情報が重要であると考え、ユーザの閲覧・検索履歴であるネットワーク上の動線と、行動軌跡である実空間上の動線とを融合・解析する手法を提案し、モバイル計算環境における新しい情報の価値指標を確立することである。具体的には、(1) ネットワークにより影響を受けた行動の変化を判別する行動認識技術、(2)行動変化の原因となった情報の特定技術、(3) 時間的かつ地理的構造を有する情報の価値指標の定義、を研究の柱として掲げ、各技術に関する課題とその解決策を探求する。また、評価を通して提案した情報の価値指標の有効性を明らかにする。 本年度は、「行動の変化を判別する行動認識技術」と「行動変化の原因となった情報の特定技術」の精度を高め、昨年度までに得られた成果を活用して、「時間的かつ地理的構造を有する情報の価値指標の定義」を主に研究した。さらに、生体信号センサの情報と、行動の変化およびその変化の原因となった情報を可視化するソフトウェアを開発した。研究期間全体の成果は以下の通りである。 ・生体信号センサを用いた行動変化の判別とその変化の原因となった情報の特定を行う技術を開発し、生体信号情報と行動変化の関係性を明らかにした。特に、脳波とその脳波を検出した位置を記録・可視化するソフトウェアEEGMapを開発し、行動の変化とその原因を容易に解析することを可能にしている。 ・動線解析技術の精度を高めるために、より多くの基地局を位置推定に利用できる技術を開発した。具体的には、様々な無線通信メディアの基地局を単一の無線通信メディアを装備した端末で利用できる位置推定技術を開発した。 ・生体信号センサの値を利用して、利用者のシーンを自動的に分割する技術を開発し、シーンの変化と各シーンに情報を結びつけ、シーンの検索を実現する技術を開発した。
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