研究課題/領域番号 |
25870930
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研究種目 |
若手研究(B)
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研究機関 | 熊本大学 |
研究代表者 |
安部 美和 熊本大学, 政策創造研究教育センター, 助教 (40619805)
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研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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キーワード | 再定住 / 集団移転 / コミュニティ / 災害復興 / 居住 |
研究概要 |
本研究は、自然災害後に実施される住宅移転を対象とし、移転を余儀なくされた人々がどのように生きる力を回復していくのか、また新しい土地に適応していくのかについて、日常と非日常の連続性の中からその転換点を見出そうとするものである。特に明らかにしたい目標としては、①同じ集落内外における関係性の変化、②「過去」と「未来」のどちらが重んじられた移転だったのか、③新しい「場所」でどのような価値を見出したのかの3点を明らかにすることとしている。これは、いまだに「復興」が定義されない中で被災した人々がどのように被災生活から日常生活に戻っていくのかを長期的に追うものであり、今後の復興支援、特に移転復興における政策に寄与する研究である。 2013年度の研究では、スリランカ(西海岸)における追跡調査および中越地震被災地における追跡調査を実施した。スリランカでの調査では、2006年以降継続して実施している質問紙調査に加え、移転地の復興住宅に居住する住民を対象に聞き取り調査を実施した。すでに住宅の所有者に変更が生じているもの、変わらず移転先での生活を継続するものがみられ、所有者の変更にいたった経緯や現在の生活について聞き取っている。この調査は、2006年に開始し現在に至るまで定期的に同じ集落での調査を行っているもので、2007年の第1回調査時の回答と2010年また今回の調査結果との比較、居住者の生活に対する言葉の変化をみている。調査結果を踏まえて、現在2014年に出版予定の図書(英語)Recovery from Indian Ocean Tsunami: Ten years Hourney (Rajib Shaw Edit.)へ投稿中である。 また、中越地震の被災地では、集団移転を実施した集落の経過観察および、近隣の被災集落での参与観察を行い、被災前と後での生活の変化を語っていただいた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
当初予定していたスリランカおよび中越地震の被災地での調査は、ほぼ予定通り進められているが2013年度中に実施予定であった日本国内の防災集団移転促進事業実施地域での定住状況視察については実施が行えなかった。年度内に所属の変更が生じたため、時間的な課題があり継続調査を行ってきているスリランカおよび中越被災地での調査を優先させた結果である。しかし、2014年度に実施できるよう、研究協力者と協議し資料の整理等は実施している。
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今後の研究の推進方策 |
本年度は、当初より予定しているスリランカ東海岸での調査を実施予定である。また、被災から10年の節目にあたるため日本とスリランカの両地域の研究者と協力し、当時の被災者および支援者を対象としたグループディスカッションの場を設定する。この機会を利用し、被災および移転当事者による移転復興を振り返りとこの10年間の生活について情報交流を行い、支援者および研究者はそこから得られるキーワードを元に、支援方法と被災者生活の影響について分析する。研究実施にあたっては、すでに東側での災害支援に携わりまた継続研究を実施している、宇都宮大学の栗原俊介講師に研究協力者として調査および分析、ディスカッションへのご協力をいただく予定にしている。 また昨年度未実施になっている国際の集団移転事業実施地域視察についても、資料をもとに候補地としている地域(熊本県天草:水害、長崎県島原:噴火災害)および集団移転法が制定される昭和47年以前に移転例とされてきた長野県伊那谷(水害)の視察、データ収集を行う予定である。
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次年度の研究費の使用計画 |
研究遂行にあたり、研究代表者の所属の変更が年度内に生じたことおよび予定していた研究協力者の海外研修が年度内に発生したため、スリランカでの現地調査人数に変更があった。 今年度の調査研究では、予定していた渡航回数で現地の調査期間を延長し調査を実施する。また、今年度はグループディスカッションなどワークショップ形式で参加者の意見収集を予定しているため、当初予定していた協力者に加え、本研究が対象としているインド洋津波(2004年)発生以前よりスリランカで活動を実施されていた宇都宮大学の栗原俊介講師にも協力頂き、スリランカ東部での調査を実施することにしている。研究代表者はすでにスリランカ西部での調査を2006年より開始しており、栗原氏による東部の調査結果との比較が可能となる。 また、昨年の計画で実施できなかった日本国内の集団移転事例については、期限内に現地視察にいたれなかったが、資料およびデータ収集は実施済みで調査候補地を絞り込んでいるため、本年度並行して聞き取りを行う予定にしている。
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