研究課題/領域番号 |
25870940
|
研究機関 | 阪南大学 |
研究代表者 |
伊澤 正興 阪南大学, 経済学部, 准教授 (40611942)
|
研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2016-03-31
|
キーワード | 治水史 / 連邦治水法 / ミシシッピ川大洪水 / ミシシッピ・デルタ / 湿地 / 野生生物保護 / 環境保全 / 人種差別 |
研究実績の概要 |
本研究は、1927年ミシシッピ川大洪水が河川流域社会に及ぼした影響について、ミシシッピ川下流プランテーション社会と上流の商工業社会を対象に検討する。本年度の研究は、夏季において、ミシシッピ州ジャクソンの歴史資料館を訪問し、プランターの書簡、日記、新聞記事、政府刊行物を収集した。一方、ミシシッピ川上流社会については、春季に、ミネソタ州セントポールの公文書館を訪問し、湿地開墾の政府史料、湿地再生事業を主導したリチャード・ドーレの文書を収集した。 これらの史料は河川流域の湿地開発とその後の水害が社会構造の違いを大きく反映した点を理解するうえで、極めて重要な史料である。また、当該史料によって、大規模な治水構造物を建設しても、被災地の社会構造が脆弱であれば、水害からの復興は困難を極める点がある程度のところ解明できたと考えられる。 ミシシッピ・デルタのプランテーション社会は、河川流域の開墾を通じて、新たな南部社会を構築しようとした。同地域では、湿地の開墾は定住困難な土地に鉄道、学校、教育施設、教会、商業施設を設置するきっかけとなり、白人中心のデルタ社会の発展を予感させた。しかし、1927年ミシシッピ大洪水にともない、一部の大土地所有者と小作人との間で人種間のコンフリクトが発生し、多くの黒人労働者がデルタを去って行った。 これに対して、ミシシッピ川上流域では、1927年ミシシッピ川大洪水以後、民主的な河川流域管理が定着しはじめた。なかでも、ミネソタ州では、ドーレを主導とする野生生物保護局が環境保護団体や様々な社会集団と連携しながら、開発の恐れのある湿地を買戻し、公共所有にすることで、自然を保存する動きが見られた。 本年度は1927年ミシシッピ大洪水後、2つの地域の異なる状況とその背景を史料から裏付け、その成果の一部を著書にまとめ刊行した。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
公文書館での史料収集については当初の予定どおり進んでおり、また史料収集の成果をすでに著書刊行の形で取りまとめた。
|
今後の研究の推進方策 |
これまでの史料調査によって、国内で入手困難な文書や議会史料を現地の公文書館において収集してきた。今後は、これまで収集した史料の内容をより精緻な分析へと発展させていくために、本年度は関連資料の調査および収集をさらに進めていく。
|
次年度使用額が生じた理由 |
現地の公文書館の職員の方々の尽力を得られたことで、史料調査および収集が効率的に進み、当初計画していたよりも、少ない日数で計画を遂行できた。また、当初計画ではパソコンの購入を予定していたが、大学の個人研究費を充てたたため、予算に若干の余裕ができた。
|
次年度使用額の使用計画 |
本年度は収集済みの史料から得られる知見をさらに精緻にかつ発展させるためにも、可能な限り海外史料調査の日数を捻出し、関連史料の収集と成果を取りまとめていく。
|