わが国では急速に高齢化が進み、2025年に向けて地域包括ケアの構築が推進されており、今後は自宅や地域のなかで人生の終末段階を過ごす人が増えてくると予想される。このような見通しのもと、少しでも家族や知人など身近な人ががん終末期にある患者を理解し、身近なところで支援に参加することが必要になると考えられる。本研究では、がん終末期を迎える人に対して身近な人が提供できる支援等の情報を発信し、地域住民が身近なところで患者の支え手になれるよう啓発プログラムを考案、試行、評価を行うことを目的とし、がん終末期を迎える人に対する認知・関心・支援の現状調査を行った。そして、啓発プログラムの計画と試行、評価を行った。 わが国の背景として、「やがて『1人の若者が1人の高齢者を支える』という厳しい社会が訪れることが予想」されている(総務省・厚生労働省)ことから、調査は、まずは対象を若者に焦点を当て行った。次に、対象の範囲を広げ、大学が立地する地域で生活している住民を対象に調査を行った。若者と若者以外では調査結果が異なっており、世代による特徴を反映した啓発プログラムが必要であると考えられた。 啓発プログラムでは、まず若者を対象に試行し、前後での比較評価を行った。次に対象の範囲を広げ、大学が立地する地域住民を対象にして試行したが、これについては参加者数が少なく、前後での比較評価はできなかった。 また、地域で活躍するがん患者会への参加や運営協力を通して、また健康教育に貢献している企業との打ち合わせを通して、情報収集を行い、今後のプログラム内容の検討材料とした。 調査と啓発プログラムの試行・評価、情報収集により、今後の研究発展に向けての課題と、新たに「がん終末期を迎える人と家族を支えるための啓発プログラム」の方針を明らかにした。現在、この成果の論文化(投稿・査読中)を行っている段階である。
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