スーパバイザ制御は離散事象システムに対する代表的な制御法であり,制御器であるスーパバイザが,与えられた論理的な制御仕様を満足するように,生起を許可する事象の集合(制御パターン)を指定することで,システムの振る舞いを制御する。本研究では,離散事象システムに対する安心安全な制御の実現のために,システムの抱えるリスクを陽に考慮した,定量的評価指標に基づく新たな最適スーパバイザ制御について研究している。 本年度は,前年度までの研究成果を発展させるとともに,実システムへの適用も見据えて研究を進めた。遷移先が確率的に決定される確率離散事象システムに対し,システムが仕様外の状態に遷移する確率をリスクとしてとらえ,確率遷移モデルの学習により,不可制御事象のある中で,各状態におけるリスクを一定以下に保証する制御パターンの集合を求めた。そして,強化学習により,許容するリスクの下で,コスト面で最適となるようにスーパバイザを構成する新たな手法を提案した。また,システムの振る舞いを先読みしていくことで,大規模システムへの最適スーパバイザ制御を実現する最適LLPスーパバイザ制御について検討を加え,AGVやロボットアームなどによって構成される生産システムのミニチュアを用いた実験により提案手法の有効性の評価を行った。これらの成果から,大規模離散事象システムに対しても有効な,定量的リスク保証型最適スーパバイザ制御の基本的な枠組みが完成できたと考えている。
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