本研究は、がん細胞が浸潤・転移の過程で置かれる3次元的接着環境に適応し、増殖する機構の解明を目的とした。本研究で作製した3次元環境適応株は、親株と比較して、定常状態でのSTAT3リン酸化の亢進とこの下流で発現制御を受けるアポトーシス抑制因子Bcl-xの発現上昇、MMP-9やCathepsin Lなどのプロテアーゼの発現亢進とHAI-1/2などの数種類のプロテアーゼ阻害因子の発現抑制が認められた。従って、MKN7株の3次元的足場環境への適応制御は、STAT3シグナルを介したアポトーシス抑制とプロテアーゼ分解による細胞外環境のリモデリングなどが関与することが示唆された。
|