現在までに行った、インタビュー調査や文献などをまとめ、ALS患者と人工呼吸器の装着について考察を行った。 ALS患者は、身体機能が衰えても、人工呼吸器を装着することにより、生きることができる。しかし、実際の装着率は30%程度と言われており、70%の方は装着しないと考えられる。これらの決定には、今ままでのインタビューを通して、家族の影響が強いことが示された。例えば、比較的家族の年齢が若いこと、家族の中に女性の介護者がいることが挙げられる。そのことから、人工呼吸器は本人の意思決定に基づいて装着・非装着が決められるが、実際には、本人の意思決定に家族の影響が非常に強く関わっていると考えられる。また、家族の影響が強い故に、自らの決定が難しい場合もあると考えられる。 一方で、ALS患者の中には、家族がいない方もいる。ALS患者のA氏は、一人暮らしを行いながら、人工呼吸器の装着を決定し、その後もヘルパーなどを利用しながら、現在も生活をしている。A氏は、自ら様々な医療・福祉サービスの情報を収集し、事業者などと交渉しながら、自分の生活環境を作り上げてきた。人工呼吸器装着後も、PCなどを通した多様なコミュニケーションを活用し、一人暮らしを営んでいる。A氏が人工呼吸器の装着・非装着を決め、生活を成立させている背景には、医療・福祉サービスの充分な活用が挙げられると考えられる。
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