本研究では、神経難病患者の人工呼吸器装着・非装着という医療の選択に影響を与えているものは何かについて取り上げた。医療的ケアを必要とする神経難病患者の在宅療養環境の構築に着目し、家族が与えている影響、また家族以外が与えている影響について、インタビューを通して考察した。 今年度は、過去インタビュー内容を人工呼吸器装着・非装着およびジェンダーの視点から再分析した。A氏(女性、20代)の場合には、週1でヘルパーを利用しているが、その他の時間は母親がケアを担っており、在宅療養においては、母親からの支援が必要不可欠となっていた。現在は人工呼吸器を装着していないが、必要になった際には呼吸器を装着し、在宅生活を送る予定であった。B氏(女性、60代)の場合には、毎日ヘルパーを利用しており、主介護はヘルパーが担っていた。ヘルパーがいない時間は夫がケアを行っていた。ヘルパーを毎日利用することで、在宅療養環境を実現しており、夫の余暇の時間も確保できるようになっていた。B氏は人工呼吸器を装着しており、今後も、家屋の改修を重ねがら在宅生活を継続していく予定であった。C氏(男性、30代)は、以前は妻が主介護を担っていたが、妻の体調悪化により、ヘルパーを利用するようになった。毎日、ヘルパーの利用が可能となっており、現在は安定した在宅療養環境が構築できている。以前は、家族の大黒柱である自分が働けない状態になったことに対し、大きな心理的苦痛を感じていたが、現在は在宅環境が安定することにより、心理的にも前向きに考えられるようになったとのことであった。人工呼吸器は装着済みであり、今後もヘルパーを利用しながら在宅生活を継続していく予定であった。
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